『良くできたイミテーションを、本物と呼ぶのだ』
2009年 03月 01日
アレクサンドリア。
晴天微風。
停泊中の船長室に、ロクサーヌが手紙を持ってきた。
何でも、酒場のマスターから、私宛に、と言うことで渡されたのだという。
最近はアレキサンドリアでトラブルは起こしていなかったはずだが、と思い、怪訝な気持ちで封蝋を切った。
中身は、簡潔で、知人のイ・・・・・・・・・・・・・・・・・
…コリーナという少女からの手紙だった。
彼女は今、アレキサンドリアの砂漠で鉱石を採取していたのだというのだが…。
この鉱石、良く磨き上げると、ガーネットや、ルビーによく似た輝きを放つようになる。
工芸師の玉子が良くやる、模造宝石作り、と言うやつだ。
そして、その彼女からの手紙はもちろんこうだ。
待合いの場所はアレキサンドリア書庫前。
私は伝統の変装用具である『鼻眼鏡』を着用し、時間よりかなり早く待合い場所に行気、さりげなく道に座って待った。
同じく鼻眼鏡を着用したハーフェズが、なんだか俺達浮いてないか、と心細そうに言う。
私は鼻眼鏡を指でくい、と持ち上げて、異国人が目立つのはいつものことだ、と答える。
ハーフェズが、なるほどな、と感に堪えないという風に言った。
…そうこうしているうちにコリーナ嬢がやってくる。
と、彼女はいつものように、はろはろー、と親しげに私に声を掛けてきたので、私は慌てて彼女をたしなめる。
彼女は、ただ友達に挨拶しただけ、と言うが、どこに商人ギルドの目が光っているか、分からない。
コリーナ嬢は(よく見れば、彼女は不心得にも鼻眼鏡をしていない)気にしない気にしない、と言いながら、思ったより大きな皮の袋を差し出してくる。
ルビーが74個、ガーネットが24個。
かなり大口の取引だ。
ロクサーヌ(彼女も断固として鼻眼鏡の着用を拒否した)が袋の中をのぞき込んで、目を輝かせ、わあ、すごい、と子供のようなことを言う。
私は唇の端を釣り上げて、それじゃあ密輸商としては失格だな、と言い、懐から拡大鏡を取り出して、品物を確かめた。
どう、と尋ねてくるコリーナ嬢に、私は頷き返す。
かなりのいい出来の代物だ。
ハーフェズに手渡すと、彼は拡大鏡も使わずにまじまじと宝石を眺めた後、上出来だな、と言ってやはり頷いた。
これならば、売り物になる。
私は商談成立だ、と言い、6:4なら捌いてこよう、と、コリーナ嬢に言った。
彼女は少々目を丸くして、私は儲けの2割だけ貰えればいいんだけど、と謙虚なことを言う。
私は笑って、楽して儲けさせて貰うんだから、4割貰えれば上等さ、と答えて、革袋を仕舞い、
そう言って、さりげなく分かれた。
…なるほど、工芸の修行も金がかかる。
4割じゃ、ちょっと取り過ぎかな、と私は思った。
…一路、リスボンへ。
交易所の相場を確かめてみると、ルビーが8500、ガーネットが4800である。
私はしばらく考えて、ルビーには13000、ガーネットには4000の値段を付けて、いつものようにバザールを始めた。
……勝負は意外とあっけなく付いた。
私が用を足しにいって、戻ってみると、ハーフェズがルビーは全部売れたぞ、とニンマリ笑っていたのだ。
私は、あれまあ気の毒に、と笑い返してガーネットを前に出すと、
マルコ>いかが、いかが~
マルコ>ここでさくっと売っても利益になる品ばかりですよ
マルコ>出所を問わなければいい品ですよ~
マルコ>いかが?
いつものように声を上げ始めた。
…しばらくすると一人の客が品物を見て、不思議そうに、何で自分で売らないのか、と私に尋ねてくる。
私は曖昧な笑みを浮かべて、色々あるんですと答え、
マルコ>ガーネットがお勧めですぜ。今なら800利益が出る!
そう言って、ガーネットを手渡した。
彼はしばらく考えて、
お客さん。>買わせてもらいんす
24個のガーネット、すべてを買っていった。
マルコ>・・・・出所は胡乱ですがね。
私は最後にそう付け加え、金をひったくるように受け取ると、素早く船へと向かった。
一応、注意はした。
…とはいえ、あの出来の密造宝石なら、交易所のぼんくら店主にも、その客にも絶対見抜けない。
特に揉めるようなことはあるまい。
ハーフェズが、今日も安価で良品を売ったな、と口笛を吹く。
私も、俺達は商人をするには人が良すぎるぜ、と口笛を吹いた。
結局、儲けは約1000000ドゥカート。
もう少し手こずるかと思ったが、今回はあっけなく品物も捌けた。
今度は食堂前でコリーナ嬢と落ちあい、分け前の分配と相成る。
食堂の親父が私の鼻眼鏡をじろじろ見ていたが、ぎろり、と目をやると、慌てて目を逸らした。
私は、フン、と鼻を鳴らして、金貨の詰まった革袋を彼女の前に置いた。
結局、商品が好調に捌けたこともあり、コリーナ嬢に700000ドゥカート、支払うこととした。
………別に女に甘い訳じゃないが。
ただ、彼女は金袋と引き替えに、
イコリーナ >>>自分は沈没船やらないので
そういって、古い沈没船の地図の切れ端を一枚、私に渡してくれた。
冒険者には何よりの報酬だ。
悪いね、と言って、懐にしまうと、彼女はくすりと笑い、
イコリーナ >>>次のノルマです(え
そう言って、大きな革袋を掲げてみせる。
…ニワトリが先か、玉子が先か、というのは難しい問題だ。
だがいずれにせよ、作る者が居て、買う者がいる以上、密輸商という結構な商売が無くなる、と言うことはない。
おかげで、私も食べていけるというわけだ。
晴天微風。
停泊中の船長室に、ロクサーヌが手紙を持ってきた。
何でも、酒場のマスターから、私宛に、と言うことで渡されたのだという。
最近はアレキサンドリアでトラブルは起こしていなかったはずだが、と思い、怪訝な気持ちで封蝋を切った。
中身は、簡潔で、知人のイ・・・・・・・・・・・・・・・・・
…コリーナという少女からの手紙だった。
彼女は今、アレキサンドリアの砂漠で鉱石を採取していたのだというのだが…。
この鉱石、良く磨き上げると、ガーネットや、ルビーによく似た輝きを放つようになる。
工芸師の玉子が良くやる、模造宝石作り、と言うやつだ。
そして、その彼女からの手紙はもちろんこうだ。
待合いの場所はアレキサンドリア書庫前。
私は伝統の変装用具である『鼻眼鏡』を着用し、時間よりかなり早く待合い場所に行気、さりげなく道に座って待った。
同じく鼻眼鏡を着用したハーフェズが、なんだか俺達浮いてないか、と心細そうに言う。
私は鼻眼鏡を指でくい、と持ち上げて、異国人が目立つのはいつものことだ、と答える。
ハーフェズが、なるほどな、と感に堪えないという風に言った。
…そうこうしているうちにコリーナ嬢がやってくる。
と、彼女はいつものように、はろはろー、と親しげに私に声を掛けてきたので、私は慌てて彼女をたしなめる。
彼女は、ただ友達に挨拶しただけ、と言うが、どこに商人ギルドの目が光っているか、分からない。
コリーナ嬢は(よく見れば、彼女は不心得にも鼻眼鏡をしていない)気にしない気にしない、と言いながら、思ったより大きな皮の袋を差し出してくる。
ルビーが74個、ガーネットが24個。
かなり大口の取引だ。
ロクサーヌ(彼女も断固として鼻眼鏡の着用を拒否した)が袋の中をのぞき込んで、目を輝かせ、わあ、すごい、と子供のようなことを言う。
私は唇の端を釣り上げて、それじゃあ密輸商としては失格だな、と言い、懐から拡大鏡を取り出して、品物を確かめた。
どう、と尋ねてくるコリーナ嬢に、私は頷き返す。
かなりのいい出来の代物だ。
ハーフェズに手渡すと、彼は拡大鏡も使わずにまじまじと宝石を眺めた後、上出来だな、と言ってやはり頷いた。
これならば、売り物になる。
私は商談成立だ、と言い、6:4なら捌いてこよう、と、コリーナ嬢に言った。
彼女は少々目を丸くして、私は儲けの2割だけ貰えればいいんだけど、と謙虚なことを言う。
私は笑って、楽して儲けさせて貰うんだから、4割貰えれば上等さ、と答えて、革袋を仕舞い、
そう言って、さりげなく分かれた。
…なるほど、工芸の修行も金がかかる。
4割じゃ、ちょっと取り過ぎかな、と私は思った。
…一路、リスボンへ。
交易所の相場を確かめてみると、ルビーが8500、ガーネットが4800である。
私はしばらく考えて、ルビーには13000、ガーネットには4000の値段を付けて、いつものようにバザールを始めた。
……勝負は意外とあっけなく付いた。
私が用を足しにいって、戻ってみると、ハーフェズがルビーは全部売れたぞ、とニンマリ笑っていたのだ。
私は、あれまあ気の毒に、と笑い返してガーネットを前に出すと、
マルコ>いかが、いかが~
マルコ>ここでさくっと売っても利益になる品ばかりですよ
マルコ>出所を問わなければいい品ですよ~
マルコ>いかが?
いつものように声を上げ始めた。
…しばらくすると一人の客が品物を見て、不思議そうに、何で自分で売らないのか、と私に尋ねてくる。
私は曖昧な笑みを浮かべて、色々あるんですと答え、
マルコ>ガーネットがお勧めですぜ。今なら800利益が出る!
そう言って、ガーネットを手渡した。
彼はしばらく考えて、
お客さん。>買わせてもらいんす
24個のガーネット、すべてを買っていった。
マルコ>・・・・出所は胡乱ですがね。
私は最後にそう付け加え、金をひったくるように受け取ると、素早く船へと向かった。
一応、注意はした。
…とはいえ、あの出来の密造宝石なら、交易所のぼんくら店主にも、その客にも絶対見抜けない。
特に揉めるようなことはあるまい。
ハーフェズが、今日も安価で良品を売ったな、と口笛を吹く。
私も、俺達は商人をするには人が良すぎるぜ、と口笛を吹いた。
結局、儲けは約1000000ドゥカート。
もう少し手こずるかと思ったが、今回はあっけなく品物も捌けた。
今度は食堂前でコリーナ嬢と落ちあい、分け前の分配と相成る。
食堂の親父が私の鼻眼鏡をじろじろ見ていたが、ぎろり、と目をやると、慌てて目を逸らした。
私は、フン、と鼻を鳴らして、金貨の詰まった革袋を彼女の前に置いた。
結局、商品が好調に捌けたこともあり、コリーナ嬢に700000ドゥカート、支払うこととした。
………別に女に甘い訳じゃないが。
ただ、彼女は金袋と引き替えに、
そういって、古い沈没船の地図の切れ端を一枚、私に渡してくれた。
冒険者には何よりの報酬だ。
悪いね、と言って、懐にしまうと、彼女はくすりと笑い、
そう言って、大きな革袋を掲げてみせる。
…ニワトリが先か、玉子が先か、というのは難しい問題だ。
だがいずれにせよ、作る者が居て、買う者がいる以上、密輸商という結構な商売が無くなる、と言うことはない。
おかげで、私も食べていけるというわけだ。
by Nijyuurou
| 2009-03-01 22:46