大航海時代online Boreasサーバー  マルコの航海日誌


by Nijyuurou
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『始まりは花の姿に』

 私の名は、マルコ。

 ジェノヴァの密輸商。


 そう、密輸商、なのである。

 
 ・・・密輸商というのは何でもありの商売だが、中にはいくつか取り扱っていないものもある。

 私が取り扱っていないものも多々あって、たとえば奴隷などは私は絶対に取り扱わない。

 アウトローは自由が売りなのだ。
 その私が自由を売買するというのは、いかがなものか、と思うのである。

 法律で決められたのではない、私のルールに抵触する『禁制品』というやつだ。
 
 だが、こういう『禁制品』というのにぶち当たることは、なかなか無い。

 通常、冒険者ギルドからの依頼で手に入る報酬や、ちょっとした盗発掘で手に入る品、それに、海賊などから巻き上げる品々で、そういうちょっと気に入らない品、というのはあまり無いのだ。

 逆に、ちょっと金になりそうだという大きいヤマに限って、『禁制品』にぶち当たり、労多くして、益少なし、ということになることが多い。

 では、そういう話を避けて通ればいいではないか、というかもしれないが、これがなかなか難しい。

 そういう話に限って、入り口は小さな話だったりするからだ。



 ちょうど、アテネにいるときだった。

 酒場の二階の宿屋のベッドに転がり、柄にも無く『黄金伝説』などを読みふけっていたところ、ノックの音がした。
 ドアを開けてみると、看板娘のミュリネーで、私は手っきり、ああ、そういうことか、と有頂天になって、彼女のほうに手を伸ばしたが、彼女は彼女で笑顔でその手を弾き飛ばし、私に客が来ている、とそう言った。

 私は傷心を抱えつつも、こんなところに客、というのもおかしいな、と思いつつ、酒場へと向かう。

 待っていたのは、意外な顔だった。
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 スコール君といって、私の弟子・・・と本人はいってはいるが、まず、弟分のような若者である。
 私のかつての恩師に師事しており、そこで私の話を聞いて、
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 なんと、私と同じく商人ギルドに加盟することをやめてしまったのだ。
 おかげで、彼も交易をしておらず、また、彼は密輸などという後ろ暗い商売をしていないことから、冒険者ギルドからの依頼で、何とか食っている、という状態らしい。

 ・・・私は何度も交易をするように薦めるのだが、私の口からいっても、なんとも説得力の無い話だ。

 ともかく、彼は、私の顔を見ると、いつものように明るい笑顔でししょーと手を振って、私をテーブルに招く。

 そして、私のグラスにワインを注ぎながら、ちょっと相談があるんですが、といった。

 何でも、アテネでちょっとした依頼を受けたらしいのだが、ちょうど私がアテネにいることを知って、どうせなら一緒に、と声をかけてくれたらしい。
 どういう依頼だよ、と尋ねる私に、スコール君はちょっと恥ずかしいのですが、といいながら依頼概要の書かれた紙を差し出してくる。
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 なるほど、まあ、ちょっとした依頼だと、そのときは思った。
 依頼書を見ただけで、調査の内容も大体イメージできる、簡単な依頼だ。

 これくらいの依頼なら、簡単だろ、という私に、スコール君は、生物学は苦手なもので、と舌を出して見せる。
 私はちょっと、考えて、私の懐の心配をしてくれてるのか、とスコール君に言った。
 スコール君は一瞬驚いた顔をしたが、別に気を使ったわけじゃないですよ、と快活に答える。

 なるほど、万年懐具合のよろしくない私に、いくらかでも仕事を回してやろうという、気遣いだろう。

 ・・・ありがたい話である。

 にもかかわらず、横から覗き込んだハーフェズが、金になりそうも無いな、と罰当たりなことを言って、ため息を吐いた。
 私は思わず口を開きかけたが、それより早くスコール君が学術調査は、お金だけでは割り切れるものじゃないのですよー、と言い、ロクサーヌが、お花の調査なんて、素敵じゃないですか、と後を押した。

 私は、素敵よねえ、と、呟いて、たまには銭金の話は忘れようじゃないのよ、とハーフェズに言い、立ち上がった。

 ハーフェズはうなずいて、いずれにしても、慢性的に懐具合はよろしくないからな、と答えた。

 

 ・・・何のことは無い、小さな依頼の始まり。

 だが、得てして大きな話は、こういう始まり方をするのだ。
 
 
 そう、この時も、そうだった。
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by Nijyuurou | 2009-11-24 01:13 | 『愛は砂の彼方に』