大航海時代online Boreasサーバー  マルコの航海日誌


by Nijyuurou
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『訪問者はすぐそばに』

 カイロ。
  
 晴天微風。
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 港にはいるやいなや、スコール君は勢いよく駆け出した。
 実は俺、イスラム圏は初めてなんですよ、と意外と達者なアラビア語でいいながら、あちらの露天、こちらの露天をのぞき、ものめずらしそうに街行く人を見ている。
 私は変装用のタバールを直しながら、あまり目立つなよ、と彼をたしなめた。
 ところが、スコール君の耳にはまったく入っていないようで、彼は、あれが休憩所ってやつですね、といいながら走っていく。
 私はため息を吐き、それを見たロクサーヌが、今日は船長の方が錨の役ですね、と可笑しそうに言った。



 
 

 幸い、依頼の花は有名なもののようで、休憩所の親父も知っていた。
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 青い花は魔よけの証、というのはなかなか面白い話だと思う。
 7つの海の津々浦々、各種魔性のものがたびたび酔ってくるうちの船には、ぜひ花壇を作ってでも作って植えておきたいものだ。
 
 この花はファマガスタに群生しているという話で、北のファマガスタへと進路を変える。

 住民から話を聞いてみると、この花はどうもギリシャ神話で傷薬として扱われており、そのため、すぐに摘まれてしまうとのこと。

 ただ、郊外にはまだ何箇所か群生している場所もあるらしく、我々はその花を探して郊外に出た。
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 とたんにスコール君が走り出す。

 ・・・考えてみれば、まだ駆け出しの冒険者のころは、こうして郊外に出て、広い野原を歩くことも、当時の私にとって見ればたいした冒険であった。
 何処にあるのかよくわからない目標を探して、あちらこちらを迷い歩く、そういう時期が冒険者には必ずある。
 
 スコール君がまさに今、そういう時期なのだろう。
 
 地中海の眩しい日差しの中、しばらく野原を歩き、目の前に現れたのは
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 青い絨毯。

 鏃の形の花弁がいくつもあつまった、可憐な花が咲き乱れている様。
 スコール君が、妙にまじめな顔でスケッチを取っている。
 私はちょっとため息を吐いて、しかし、これじゃああまり金にはならないか、とぼやいた。
 ロクサーヌが花を摘みながら、あら、きれいじゃないですかと笑う。
 私が黙って首をすくめると、ハーフェズが、審美眼のないやつだな、とからかうように言った。
 
 俺はスレてるんだ、と私は言い返した。

 
 ・・・私たちはそのまま、アテネへと引き返して依頼を報告。
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 スコール君は依頼を終えてもまだ矢車草のスケッチやら、メモやらをひっくり返し、ああでもない、こうでもないと何かを考えている。

 彼にとっては、こんなささやかな依頼でも、作業のようにこなしていく、そういう依頼ではないのだ。
 スコール君、と、声をかけると、彼は、すいません、ちょっと記録をまとめてますので、と急がしそうに言う。
  
 蝋燭の明かりに照らされた、真摯な眼差し。

 俺はスレてるよな。

 私は一つ呟いて、彼を残し、宿屋へと帰った。

 
 
 ・・・これが、最初の話である。



 次の話が舞い込んでくるのが、その次の日の朝。
 
 
 酒場の二階にある宿屋の部屋で毛布に包まっていると、ノックの音で目が覚めた。
 
 窓を見ると、もう午後の明かりが差し込んできており、ドアを開けてみると、看板娘のミュリネーで、私はてっきり、ああ、そういうことか、と有頂天になって、彼女のほうに手を伸ばしたが、彼女は彼女で笑顔でその手を弾き飛ばし、私に客が来ている、とそう言った。

 私は少々きな臭い気持ちになって、どんな客だ、と聞くと、かわいらしいお嬢さんだ、と言う。

 私はすばやく身だしなみを整え、階下へと向かった。



 待っていたのは、長い髪を二つに結い、華やかな赤いドレスを翻した14,5歳の少女。
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 だが、見知った顔である。

 この少女、ミミー=ブレッドと言い、もともとはロンドンで食料品を商う小さな商家のお嬢さん、である。
 見かけによらず、なかなかいい交易商人(本人はパン屋といっているが)にして、提督でもあり、なおかつ、私と同じ商会に所属する仲間でもある。

 その彼女が、スコール君とお茶を飲みながら、私の方に手を振っている。
 どうしたんだ、と私が言うと、彼女は少しいたずらっぽく笑って、仕事をお願いしたいんです、と言った。
 どういうことだ、と聞き返す私に彼女は席を勧め、エジプトの古い昔話なんですけれど、といって、話を始めた。
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 珍しい話である。
 彼女はあくまで食料品を主に取り扱う商人で、その彼女が冒険者の真似事と言うのが、珍しい。

 ひとしきり話が終わり、どういう風の吹き回しなんだ、と聞くと、彼女は少し決まり悪そうにして、それからちょっと微笑んで、ほら、悲劇の王女の物語、なんて気になるでしょう、といった。
 
 私は思わず苦笑いし、ロクサーヌの方をちらりと見て、うちにもそういうのが好きそうなのがいるんだよ、と答え、それから、スコール君に、どうするんだ、と聞いた。

 スコール君は迷うことなく、カイロに行きましょう、と答えた。

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by Nijyuurou | 2009-11-29 19:51 | 『愛は砂の彼方に』