大航海時代online Boreasサーバー  マルコの航海日誌


by Nijyuurou
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『欲望は夜の影に』

 アレキサンドリア。
 
 晴天、西の風。

 件の学者は私たちの顔を見ると大きく手を広げ、笑顔で迎えてくれた。
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 何か成果があったと聞いたが、と尋ねると、
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 そういって本棚の方を指し示す。
 だいぶこの話に入れ込んでるんだな、と言うと、彼は少々照れくさそうに、伝説が史実かもしれないとすれば、誰だって胸が躍ります、と笑った。
 
 私は、お互いにな、と答えて、本棚の方に目をやった。
 そこには古代エジプト後、ギリシャ語、ヒッタイト語等々、様々な古代語の書かれたパピルスが納められれており、学者はその中の一枚を引っ張り出し、
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 私に示してみせる。
 ネブ・ケペル・ラー、というのは聞いたことの無い王の名だ。
 学者に聞いてみると、聞いたことの無い王です、この名前は創作伝承かもしれませんね、という。
 ここに来て『創作』はないだろう、と言い返すと、ともかく、アンケセナーメンの夫を捜す手助けにはなるはずですよ、と言う答えが返ってきた。

 スコール君は小さくため息をついて、これからどうするんですか、と言う。
 私は、さしあたってはカイロで調査をしてみよう、と答え、港へ歩き始めた。

 
 ところが意外なことに、出航所の役人のところに顔を見せると、役人が私のところに手紙を持ってきて
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 と、言う。
 ミミー嬢が顔を輝かせ、これで調査が進むでしょうか、と笑う。
 ハーフェズが、それを聞いて、やけにタイミングがよすぎて怖い気もするがな、と呟いた。



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 待っていたのは、一枚のパピルスだった。

 さほど古いものではなく、やや稚拙な筆致でいくつかの神聖文字が書かれている。
 街役人は、
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 と説明した。
 パピルスには、そこに書かれた文字が王の名前であることを示すカルトゥーシュの中に
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 とある。
 私が声に出して読み上げると、街役人が不思議そうに
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 と言った。
 スコール君が、カルトゥーシュの中にあると言うことは、このネブ・ケペル・ラーというのは間違いなく王の名、と言うことですね、と言う。
 私はうなずいた。
 ナイル中流のレリーフに刻まれていた、と言うことは、アンケセナーメンも、失われたアンケセナーメンの夫も存在するという証拠に違いない。

 ともかく、言ってみよう、と私は言った。
 ロクサーヌが、学者さんと相談しなくてもいいのですか、と口をとがらせる。
 私は、ハーフェズと顔を見合わせ、うなずきあった。

 この一件には財宝の臭いがする。
 
 臭いはするのだが、何となくうまく行きすぎている気がする。
 
 調査が行き詰まりかけたときに都合よく出てくる資料といい、妙に協力的な役人どもといい、だ。

 はっきり言って、臭い、のである。

 だいたいこういう一件に限って、裏で誰かが手を引いていて、我々が財宝を見つけたとたん、裏で手を引いていた黒幕が財宝だけ持って行こうと登場する、と言うパターンが多々ある。

 このパターンには、ハーフェズも私も慣れっこだ。
 
 と、いうわけなので、うまいこと目的のものを引き上げて素早く撤収したい。
 言い方を変えればこうだ。

 「お宝だけとっとと頂戴して、さっさとズラかりたい」

 ロクサーヌが我々の心を見透かしたようにため息をつき、ミミー嬢に何事か耳打ちする。

 ミミー嬢が、『うわー』もしくは『あちゃー』という顔で私たちの方を見る。
 
 私とハーフェズは、ぞろり、と笑って見せた。


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 ともあれ、ナイル中流域に向けて、出発。

 途中、忘れているかもしれないが『本職はパン屋』のミミー嬢の作った
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 を食しつつ、ナイル川を遡航していく。
 以前はナイル川も危険な地域だったが、最近は海賊が出ることもなく、安全な船旅ができるようになった。

 もっとも、ナイルの中流域で問題なのは、陸上の調査だ。

 あたりは一帯砂漠が広がる過酷な環境なのは言うまでもない。
 
 さらに、ナイル中流域は砂嵐の多発する地帯もあり、冒険者ギルドの調査隊も手を焼いており、多くの犠牲者を出している。

 ただ、スコール君はそんな地帯であっても代わりはなく、
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 いつものようにはしゃぎ回る彼。
 私はそれを横目にレリーフがあったという岩へとルートを探る。
 悪いことに、地図から言うと、問題の岩というのは問題の砂嵐地帯の中にあった。

 ししょー、なにをきんちょーしてるんですか、と、緊張感のない声を上げるスコール君の横っ面を張り倒しつつ、私たちは前進した。

 とはいえ、案ずるより産むが易しと言う言葉の通り、天候は快晴。

 砂漠で快晴が、いいのか悪いのかはわからないが。ともかく、問題の地点まで到達。
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 あたりを調べてみると、なるほど、問題のヒエログリフのが見つかった。

 ところが、である。

 刻まれていたのは、岩ではなかった。
 もっと平らで、堅い。

 これは岩じゃないぞ、とハーフェズが言う。
 焼き煉瓦の壁の一部ですね、スコール君がうなずいた。
 建物の残骸か何かだな、と私は言ってスコップを持ち上げた。



 交代しながら、慎重に掘り進むことしばし。 

 最初に何かあることに気がついたのは、ハーフェズだった。

 金属の板のようなものが地面からつきだしている。

 我々は俄然勢いづき、出てきたお宝に傷をつけないよう、そっと、それを掘り出した。

 地面の中から姿を現したそれは、
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 と、思った。
 だが、掘り出して1分もしないうちに、ハーフェズが首を振る。
 そして、一言、これは銅だな、と言い切った。

 私は目を疑い、何度も玉座をこすったり、ひっくり返したりして、確かめたが、間違いない。
 私は思わず怒りに駆られ、玉座を横倒しにひっくり返す。
 野蛮ですね、とロクサーヌが眉をひそめたが、知ったことではない。

 ・・・と、スコール君が横倒しになった玉座を見て、ここに彫刻されてるのは、ファラオと王妃じゃないですか、と呟いた。

 なるほど、言われて初めて気がついたが、背もたれの部分に刻まれたのは、まだ若いファラオと、その后の仲むつまじい姿だった。

 一足のサンダルを、二人で片方ずつ履いて、談笑する二人。

 ミミー嬢が、ネブ・ケペル・ラー 飛べない鳥と、聖なる花とともに、と呟く。

 私は、なるほどな、と頷いた。

 要するに、この玉座は本物の玉座の雛形のようなもの、なのだろう。
 王の墓を作る際、盗掘を避けるため、偽の埋葬品を納めた偽の墓を作る、と言う話も聞いたことがある。

 だが、当時の墓所というのは、だいたい集まった場所に作られていたという話もある。
 
 ハーフェズが、要するに、本物のファラオの墓もこのそばにある可能性が高い、と言うことか、と笑った。

 私は、記憶をたぐり、この付近で陵墓のありそうな地点を思い出してみる。


 ・・・考えてみると、ギルドが砂嵐の影響で発掘を断念した地点や、接近もできなかった箇所が、何個かあるはずだ。
 

 私が、そう告げると、皆、表情が輝いた。

 金銀財宝満載の学術的に価値の高い幻のファラオの墓が、すぐそばにある。

 私ははやる心を抑え、このままじゃ掘り出すこともできんから、一度アレキサンドリアで物資を整えよう、と言った。

 ミミー嬢が、冒険者ギルドに報告もしないと、と続ける。

 私とハーフェズは顔を見合わせ、それはいいんだ、と彼女に詰め寄った。
 
 ミミー嬢が、じりっと後ろに下がり、でも、依頼の報告とか発掘の許可とか・・と訳のわからないことを呟く。

 私は笑顔で、まだ依頼は終わってない、と答える。
 ハーフェズがさらにいい笑顔で、ただの素堀をするの許可はいらないとも、と言った。

 ミミー嬢が泣きそうな顔でロクサーヌ方に目をやり、ロクサーヌは無言でこめかみを揉んだ。




 アレキサンドリアには夕方に着いた。

 一端行動を始めると素早い我々は、真っ直ぐかつ秘密裏にこの港に戻ってくると、物資の調達を始めた。
 
 ギルドの依頼も受けている、と言うことも考えると、あまり時間はかけられない。

 妙な疑いをもたれる前に依頼人の意向も考え、速やかに発掘をしてしまう必要がある。
 と、なると、物資の補給に使える時間はほぼ半日。
 
 もう店じまいを始めたバザールを巡って、必要なものをそろえてしまうと、以前から知っている裏宿に上がり込む。
 

 この宿、見た目は汚い宿なのだが、中は割と豪華で、いかにも「悪い宿です」という感じが私は気に入っており、この街に来るたびによく使っているのだが、スコール君はそれが珍しいのか、あちこち見て回って宿の親父から剣呑な目で見られたり、枕を投げてハーフェズに睨まれたりしていた。

 明日朝一番に出発する予定と言うのに、である。

 私は少々あきれ、もう寝るぞ、と言って、明かりを消そうとした。
 明かりが消えれば、このやっかいな若者もさすがに眠るはずだ。

 ところが、明かりが消えようとする、その刹那である。
 
 ドアをたたく音がした。

 最近、こういう状況で痛い目を見続けていた私はさすがに慎重になり、酒場娘ならお断りなんだが、と警戒心むき出しで返事をする。

 ところが帰ってきたのは宿の親父の、ちょっといいかニコロ、と言う声だ。


 ハーフェズが顔色を変え、やばい、と言い、私はスコール君に、逃げるぞ、と声をかける。
 パジャマ姿のスコール君は、どうしたんですか急に、と、目を白黒させる。
 私は、ニコロって言うのは手入れだから逃げろっていう暗号だ、と説明して、荷物を窓から放り出す。
 そして、スコール君の襟をひっつかむと、今度は自分も窓から身を躍らせた。

 石畳の堅い感触。

 そして目を開けると、そこにはマッチロック銃で武装した、兵士の一団がいた。

 私は笑顔で手を挙げ、スコール君におまえも手を挙げろよな、と声をかける。
 ハーフェズが、やはりこれも笑顔で手を挙げつつ、どうすんだ、と聞いてくる。
 私は笑顔のまま、ロクサーヌがいる、彼女が俺たちの無実をはらしてくれるはずだ、と答えた。
 スコール君が引きつった笑顔で、はらすのは嫌疑ですし、第一、まるっきり無実でもないです、と声を上げる。
 
 私は笑顔のまま、うるせえ、と答え、宿屋の方に目をやった。
 ロクサーヌは無事逃げてくれただろうか。
 大体、我々の中で一番腕が立つのが彼女である。
 その彼女なら、何とかしてくれる、ような気がする。

 だが、しかし、私は見てしまったのだ。

 取り囲む兵士を睨み付け、ミミー嬢を庇うようにして宿屋からつれてこられるロクサーヌの姿を。

 ロクサーヌもこちらの姿に気がついて、さすがに不安そうなまなざしを投げかけてくる。

 とりあえず、笑うしかないな、と私は思った。
 
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by Nijyuurou | 2010-01-04 23:48