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大航海時代online Boreasサーバー  マルコの航海日誌


by Nijyuurou
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『剣と毒薬』

12月2日、アレクサンドリア図書館。

 聖ゲオルギウスの調査のはずが、いつの間にかドラゴンの調査をする羽目になっている。

 一日書庫に籠もって調べ物をしたが、
『剣と毒薬』_c0124516_2236528.jpg

 と言うことぐらいしか、分からない。
 ………ドラゴンなど、いる訳がない、と私は思う。

 伝説だ。

 そんな生き物の調査、どれだけ頑張っても、進む、訳がない。



 ところが、だ。
 書庫の学者は
『剣と毒薬』_c0124516_22372326.jpg

 こういう見解らしい。
 確かに、場所も聖ジョージの伝説に出てくるシリアだ。
 ともかく、そう言う物が出てくる、と言うのであれば、調べてみる価値はある。

 一路、ベイルートに。

 ・・・ところが、いざ現地へきてみると、聞いていた話とは少々違った。
 以前はそういう「翼の生えた巨大な生き物の骨」がいくつも見つかったそうだが、今ではさっぱりだというのだ。

 掘りすぎたらしい。

 好事家が高く買うため、盗掘屋が掘り尽くしてしまったのである。
 私は思わず、盗掘屋共め、と毒づき、そんな私にドゥルシネアが冷たい視線を向けてきた。

 
 ……幸い、アレクサンドリアの西ではまだ掘れる、と言う話を聞き込んだ我々は、再び西へ………。
 北アフリカの荒野のごとき砂漠で、ツルハシを振り回す事と相成った。
『剣と毒薬』_c0124516_22395229.jpg

 滴る汗をぬぐいつつ、俺たち、何をやってるんだろうな、とハーフェズが呟く。

 それは私が聞きたい。

 聖ゲオルギウスの調査じゃなかったのか、とぼやきつつ、私もツルハシを振るう。

 と…。

 手応えが少しおかしい。

 妙に柔らかく、岩が崩れ、中から、骨のようなもの、が姿を見せている。
 あ、と声を上げると、三々五々、あたりを掘り返していた船員達がドヤドヤと集まってきた。

 それからが大変であった。

 骨の様な石を壊さないように、慎重に掘り出していく。

 その作業にほぼ1日。

 ようやく掘り出されたのは、巨大な翼を持った、龍の姿だった。

 見ると、確かに石なのだが、普通の石ではない。
 まるで、生き物の骨がそのまま石になったかのような印象を受ける。

 …もっとも、魔法でもあるまいし、元々、こういう形の岩なのだろう。

 いずれにせよ、ドラゴンらしきもの、には変わりない。
 私は、岩をそっと船に乗せ、ベイルートの酒場のマスターのところまで持っていった。

 
 マスターの顔と言ったら無かった。
 目を白黒させて、まるで夢でも見るような顔でその岩を見つめ、普通の生き物とは全く違う、本当にいたのか、と子供のように言ったものだ。
『剣と毒薬』_c0124516_22401524.jpg

 私は、マスターに、さあ、約束通り勇者ゲオルグの話を聞かせてくれ、と少々得意げに頼む。
 マスターは感慨深げに龍の岩を眺めながら、うむ、と一言頷いて、まず、勇者ゲオルグの末裔は、実は俺なんだ、と言った。

 今度は私達が目を白黒させる番だった。

 ハーフェズは目を見開き、ドゥルシネアは口元を押さえ、私の口は半開きになった。

 呆然とする私達に、マスターは勇者ゲオルグの話を聞かせてくれたが、ほとんど頭に入っていない……だが…
『剣と毒薬』_c0124516_22404641.jpg

 私は、ここで正気に戻った。

 毒!?

 大きな声を上げた私に、マスターは当然の事という風に、頷いた。


 そう、勇者ゲオルグは剣ではなく、毒でドラゴンを殺したのだ。。。

 
 では、アスカロンは、と尋ねると、マスターは、龍殺しの一件がが評判になったため、うちの家紋にはアスカロンという剣が書かれている…と宣った。

 …私は怒りのあまりマスターの首を絞め、結局マイクロフトに店の外につまみ出される仕儀と、相成った。
 

 次の日。
『剣と毒薬』_c0124516_22413630.jpg

 こっそりとモスクに忍び込み、『アスカロンの書いてある紋章』を写し取ると、我々はロンドンに向けて出航した。

 ………紋章くらいでも報告しておかないと、格好が付かないことこの上ない。


 剣は剣でも、絵に描いた剣か、とハーフェズが溜息を吐く。

 ああ、と私は頷いた。
 ドラゴン相手に毒を使うなど、とんだペルセウスがいたものである。
 夢がないこと夥しい、と私は言った。

 私とハーフェズは顔を見合わせて、また、溜息を吐いた。

 アスカロンで大儲けの計画は、水泡に帰した。
 
 赤字は出なかったが、徒労感が残る。
 
 すると…嘆く私達を見た、マイクロフトが、そういやあ、あの龍の岩でも持って帰って売りさばけば、いい金になったかもしれませんねえ、と、何気ない調子で言った。

 私とハーフェズはまた顔を見合わせた。
 
 私達はほぼ同時に、船をベイルートに戻せ、と叫んだ。
 
 マイクロフトが、そんなこと出来る訳無いでしょう、と叫び返す。

 言い争う私達の上に、見張り台からドゥルシネアの、やっぱり罰が当たった…と言う呆れたような声が、降ってきた。


<ルール77『時として物語は現実と変わらないか、それ以上に非情である』> 
by Nijyuurou | 2007-12-03 22:43