『剣と毒薬』
2007年 12月 03日
12月2日、アレクサンドリア図書館。
聖ゲオルギウスの調査のはずが、いつの間にかドラゴンの調査をする羽目になっている。
一日書庫に籠もって調べ物をしたが、
と言うことぐらいしか、分からない。
………ドラゴンなど、いる訳がない、と私は思う。
伝説だ。
そんな生き物の調査、どれだけ頑張っても、進む、訳がない。
ところが、だ。
書庫の学者は
こういう見解らしい。
確かに、場所も聖ジョージの伝説に出てくるシリアだ。
ともかく、そう言う物が出てくる、と言うのであれば、調べてみる価値はある。
一路、ベイルートに。
・・・ところが、いざ現地へきてみると、聞いていた話とは少々違った。
以前はそういう「翼の生えた巨大な生き物の骨」がいくつも見つかったそうだが、今ではさっぱりだというのだ。
掘りすぎたらしい。
好事家が高く買うため、盗掘屋が掘り尽くしてしまったのである。
私は思わず、盗掘屋共め、と毒づき、そんな私にドゥルシネアが冷たい視線を向けてきた。
……幸い、アレクサンドリアの西ではまだ掘れる、と言う話を聞き込んだ我々は、再び西へ………。
北アフリカの荒野のごとき砂漠で、ツルハシを振り回す事と相成った。
滴る汗をぬぐいつつ、俺たち、何をやってるんだろうな、とハーフェズが呟く。
それは私が聞きたい。
聖ゲオルギウスの調査じゃなかったのか、とぼやきつつ、私もツルハシを振るう。
と…。
手応えが少しおかしい。
妙に柔らかく、岩が崩れ、中から、骨のようなもの、が姿を見せている。
あ、と声を上げると、三々五々、あたりを掘り返していた船員達がドヤドヤと集まってきた。
それからが大変であった。
骨の様な石を壊さないように、慎重に掘り出していく。
その作業にほぼ1日。
ようやく掘り出されたのは、巨大な翼を持った、龍の姿だった。
見ると、確かに石なのだが、普通の石ではない。
まるで、生き物の骨がそのまま石になったかのような印象を受ける。
…もっとも、魔法でもあるまいし、元々、こういう形の岩なのだろう。
いずれにせよ、ドラゴンらしきもの、には変わりない。
私は、岩をそっと船に乗せ、ベイルートの酒場のマスターのところまで持っていった。
マスターの顔と言ったら無かった。
目を白黒させて、まるで夢でも見るような顔でその岩を見つめ、普通の生き物とは全く違う、本当にいたのか、と子供のように言ったものだ。
私は、マスターに、さあ、約束通り勇者ゲオルグの話を聞かせてくれ、と少々得意げに頼む。
マスターは感慨深げに龍の岩を眺めながら、うむ、と一言頷いて、まず、勇者ゲオルグの末裔は、実は俺なんだ、と言った。
今度は私達が目を白黒させる番だった。
ハーフェズは目を見開き、ドゥルシネアは口元を押さえ、私の口は半開きになった。
呆然とする私達に、マスターは勇者ゲオルグの話を聞かせてくれたが、ほとんど頭に入っていない……だが…
私は、ここで正気に戻った。
毒!?
大きな声を上げた私に、マスターは当然の事という風に、頷いた。
そう、勇者ゲオルグは剣ではなく、毒でドラゴンを殺したのだ。。。
では、アスカロンは、と尋ねると、マスターは、龍殺しの一件がが評判になったため、うちの家紋にはアスカロンという剣が書かれている…と宣った。
…私は怒りのあまりマスターの首を絞め、結局マイクロフトに店の外につまみ出される仕儀と、相成った。
次の日。
こっそりとモスクに忍び込み、『アスカロンの書いてある紋章』を写し取ると、我々はロンドンに向けて出航した。
………紋章くらいでも報告しておかないと、格好が付かないことこの上ない。
剣は剣でも、絵に描いた剣か、とハーフェズが溜息を吐く。
ああ、と私は頷いた。
ドラゴン相手に毒を使うなど、とんだペルセウスがいたものである。
夢がないこと夥しい、と私は言った。
私とハーフェズは顔を見合わせて、また、溜息を吐いた。
アスカロンで大儲けの計画は、水泡に帰した。
赤字は出なかったが、徒労感が残る。
すると…嘆く私達を見た、マイクロフトが、そういやあ、あの龍の岩でも持って帰って売りさばけば、いい金になったかもしれませんねえ、と、何気ない調子で言った。
私とハーフェズはまた顔を見合わせた。
私達はほぼ同時に、船をベイルートに戻せ、と叫んだ。
マイクロフトが、そんなこと出来る訳無いでしょう、と叫び返す。
言い争う私達の上に、見張り台からドゥルシネアの、やっぱり罰が当たった…と言う呆れたような声が、降ってきた。
<ルール77『時として物語は現実と変わらないか、それ以上に非情である』>
聖ゲオルギウスの調査のはずが、いつの間にかドラゴンの調査をする羽目になっている。
一日書庫に籠もって調べ物をしたが、
と言うことぐらいしか、分からない。
………ドラゴンなど、いる訳がない、と私は思う。
伝説だ。
そんな生き物の調査、どれだけ頑張っても、進む、訳がない。
ところが、だ。
書庫の学者は
こういう見解らしい。
確かに、場所も聖ジョージの伝説に出てくるシリアだ。
ともかく、そう言う物が出てくる、と言うのであれば、調べてみる価値はある。
一路、ベイルートに。
・・・ところが、いざ現地へきてみると、聞いていた話とは少々違った。
以前はそういう「翼の生えた巨大な生き物の骨」がいくつも見つかったそうだが、今ではさっぱりだというのだ。
掘りすぎたらしい。
好事家が高く買うため、盗掘屋が掘り尽くしてしまったのである。
私は思わず、盗掘屋共め、と毒づき、そんな私にドゥルシネアが冷たい視線を向けてきた。
……幸い、アレクサンドリアの西ではまだ掘れる、と言う話を聞き込んだ我々は、再び西へ………。
北アフリカの荒野のごとき砂漠で、ツルハシを振り回す事と相成った。
滴る汗をぬぐいつつ、俺たち、何をやってるんだろうな、とハーフェズが呟く。
それは私が聞きたい。
聖ゲオルギウスの調査じゃなかったのか、とぼやきつつ、私もツルハシを振るう。
と…。
手応えが少しおかしい。
妙に柔らかく、岩が崩れ、中から、骨のようなもの、が姿を見せている。
あ、と声を上げると、三々五々、あたりを掘り返していた船員達がドヤドヤと集まってきた。
それからが大変であった。
骨の様な石を壊さないように、慎重に掘り出していく。
その作業にほぼ1日。
ようやく掘り出されたのは、巨大な翼を持った、龍の姿だった。
見ると、確かに石なのだが、普通の石ではない。
まるで、生き物の骨がそのまま石になったかのような印象を受ける。
…もっとも、魔法でもあるまいし、元々、こういう形の岩なのだろう。
いずれにせよ、ドラゴンらしきもの、には変わりない。
私は、岩をそっと船に乗せ、ベイルートの酒場のマスターのところまで持っていった。
マスターの顔と言ったら無かった。
目を白黒させて、まるで夢でも見るような顔でその岩を見つめ、普通の生き物とは全く違う、本当にいたのか、と子供のように言ったものだ。
私は、マスターに、さあ、約束通り勇者ゲオルグの話を聞かせてくれ、と少々得意げに頼む。
マスターは感慨深げに龍の岩を眺めながら、うむ、と一言頷いて、まず、勇者ゲオルグの末裔は、実は俺なんだ、と言った。
今度は私達が目を白黒させる番だった。
ハーフェズは目を見開き、ドゥルシネアは口元を押さえ、私の口は半開きになった。
呆然とする私達に、マスターは勇者ゲオルグの話を聞かせてくれたが、ほとんど頭に入っていない……だが…
私は、ここで正気に戻った。
毒!?
大きな声を上げた私に、マスターは当然の事という風に、頷いた。
そう、勇者ゲオルグは剣ではなく、毒でドラゴンを殺したのだ。。。
では、アスカロンは、と尋ねると、マスターは、龍殺しの一件がが評判になったため、うちの家紋にはアスカロンという剣が書かれている…と宣った。
…私は怒りのあまりマスターの首を絞め、結局マイクロフトに店の外につまみ出される仕儀と、相成った。
次の日。
こっそりとモスクに忍び込み、『アスカロンの書いてある紋章』を写し取ると、我々はロンドンに向けて出航した。
………紋章くらいでも報告しておかないと、格好が付かないことこの上ない。
剣は剣でも、絵に描いた剣か、とハーフェズが溜息を吐く。
ああ、と私は頷いた。
ドラゴン相手に毒を使うなど、とんだペルセウスがいたものである。
夢がないこと夥しい、と私は言った。
私とハーフェズは顔を見合わせて、また、溜息を吐いた。
アスカロンで大儲けの計画は、水泡に帰した。
赤字は出なかったが、徒労感が残る。
すると…嘆く私達を見た、マイクロフトが、そういやあ、あの龍の岩でも持って帰って売りさばけば、いい金になったかもしれませんねえ、と、何気ない調子で言った。
私とハーフェズはまた顔を見合わせた。
私達はほぼ同時に、船をベイルートに戻せ、と叫んだ。
マイクロフトが、そんなこと出来る訳無いでしょう、と叫び返す。
言い争う私達の上に、見張り台からドゥルシネアの、やっぱり罰が当たった…と言う呆れたような声が、降ってきた。
<ルール77『時として物語は現実と変わらないか、それ以上に非情である』>
by Nijyuurou
| 2007-12-03 22:43