大航海時代online Boreasサーバー  マルコの航海日誌


by Nijyuurou
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

カテゴリ:『Circumnavigation』( 18 )

『Farewell miss Ellena』

9月19日、セビリア。

 すべてに決着が付いた。

 手記はタベラ枢機卿へと渡され、エレナはバルボサ家を継ぐことが決まった。

 私達と言えばいつもの通り。

 
 宴会だ。
 
 王宮にあのジブラルタルの追撃戦でも捨てなかった香辛料を持ち込ん料理を作り、豪勢な祝宴となった。

 寛大なことに、うちの乗組員達も参加を許された。
 
 貴族の中の物好きな連中が残って一緒に宴席に加わり、何とタベラ枢機卿までが参加した。

 前代未聞だという。
 
 だが、いい宴会だった。

 俺とマイクロフトが女装して踊りを踊って座を沸かせ、またロクサーヌとドゥルシネアがコンビで歌を歌う。


   …どんな嵐が来ようとも、心のオール離さずに…

 
 二人の歌声が謁見室を包む。


   …やがていつかたどり着くさ ただ一人 お前の岸辺へ … 
  

 そう、どんな航海でも、いつかたどり着くのだ。

 その船乗りの、帰るべき、岸辺へ。




 翌朝…出航所で『花の聖母マリア号』の出航準備を整えていると、エレナがやってきた。


 皆、いつもと変わらないように作業を続けている。

 エレナが、おはよう、と言って甲板に上がってくる。

 皆、いつものように、おはよう、と言って彼女を出迎えた。
 

 私はちょうど船尾で釣り糸を垂れていた。

 気付かないふりをして、釣り糸を垂れていると、エレナがやってきて、いつものように水を出してくれ、私の隣に座る。

 
 確か、彼女が乗ってきた頃にもこんな事があった。

 リオデジャネイロの沖だったと思う。

 今はそのころに比べてずいぶん日差しも穏やかだ。

 竿が引いた。

 慌てて上げると、いつものようにサバだった。

 エレナは黙って、座っている。

 私も何も言わなかった。

 ゆっくりと、けだるく、午後の時間が流れていく。 


 やがて、エレナがぽつりと、エルカノさん、どうなっただろ、と呟くように言った。

 エルカノはあれから近衛隊に取り調べを受けているらしいが……。

 なにしろ、私達の飲むはずだったワインの中から毒が出たのだ…前後の事情から、誰が疑われるかは明白だ。
 しかし、やつほどの名声があれば、事をうやむやにはできるだろう。

 …だが、もう香料諸島の権益に絡むことはできまい。

 あの航路の経営は早晩他の誰かの手に移るはずだ。

 そこまで答えて、だが…と私は言った。

 それだけだ。

 それ以上の事はない。

 エルカノはやはり、初の周航を成し遂げた男として、名前を残す。

 創業の提督がマゼラン……そして、マゼランの後を継いで、世界周航をやり遂げたのがエルカノ。

 いずれ、そう言う風に伝えられるようになるのではないか、と私は言った。


 そして、今度は私が、それで良かったのか、とエレナに聞いた。


 エレナは、にっこりと笑った。

 エルカノさんも、誇りある船乗りだったんだよ、きっと、と言う。

 私はエレナの頭を撫でた。

 偉いぞ、と言った。


 エレナはひどく嬉しそうに笑った。


 だが、笑っている顔がだんだんと崩れていく。

 泣いているのか笑っているのか。

 みんなとも、これでお別れだね、とエレナは泣いた。

 泣き声が海の上を静かに流れていく。

 ロクサーヌがハンカチを目に当てた。

 ドゥルシネアがやはりべしょべしょの顔で寂しいよ、と泣いた。

 船員達の間からも、鼻を啜る音が聞こえ、それにマイクロフトのとっとと作業をしねえか、という悲鳴のような声が被さる。
  

 私は黙って彼女の肩を撫でた。

 ようやく泣きやんだ彼女に、幸せにおなり、と言うと、彼女は、またあえるよね、とぐしゃぐしゃの顔を拭きながら言った。

 最後の最後で、ひどい顔じゃないか。

 またあえるとも、そう言うと、彼女はかろうじて笑った。

 そして、
 

ブエノスアイレスでのお礼、まだだったよね…これ…もらって!
 

 そういって、
c0124516_0131260.jpg

 あのロザリオを、私の手に押しつけてきた。

 私は苦笑した。

 そして、出しそびれしまったな、と言ってから、古ぼけたピューリタンハットを彼女に被らせた。

 
 彼女は、ありがとう、と嬉しそうにその帽子に手をやる。



 私は、思わず微笑んだ。



 その帽子は、君のお父さんのだったのだ、そう言うと、エレナは何のことか分からない、そう言う顔でこちらを見た。


 
 私は、若い頃のことを、彼女に話していた。


 フェルディナントさんの人柄、してくれた話、私の憧れ…。


 あの人が出て行った日のこと、そして、その姿………。


 その帽子は、その時にあの人が私に貸してくれたもの。


 そして、と私はロザリオを持ち上げた。


 このロザリオは、私があの人に貸したもの。


 いつか航海を終えて、この港に戻ってきた時、また、この港で返すと、そう約束したと。

 
 エレナは、それじゃあ、と絶句した。

 私は笑って頷いた。


 私はフェルディナントさんの友達だったんだ。
 

 ロクサーヌが、やっぱりそんなことがあったんですね、とため息を吐く。
 

 と…エレナが、輝くような笑顔を見せた。


エレナ>私、船乗りになろうと思うんだ…お父さんに負けないように!


 そうか、と私は頷いた。

 ロクサーヌも、頑張ってねと彼女の髪を撫でた。


エレナ>マルコさんに負けないように!

 
 思わず頭を掻いてしまう。

 ドゥルシネアが私の姿を見て、おかしそうに吹き出した。


エレナ>そうなれたら…いつか、どこかの海を、また一緒に旅したいなぁ

 
 応、と船員達が応じる。
 
 マイクロフトが、真っ赤な目で、待ってるぜ、と彼女の肩を叩いた。


 
 おーい、エレナ、と、ディエゴ老人の声が聞こえる。


 彼女は、彼女の岸辺に、帰らなくては。


 だが、彼女は渡し板へと向かいながら、


エレナ>………約束だよ!マルコさん!

c0124516_0144996.jpg

 もう一度、あの笑顔でそう言った。


 私は少し考えて、
 
 

ああ、約束だ。



 そう答えた。


 そして、彼女は甲板を降りていった。




 良い潮時だな、と私は思った。

 
 展帆!

 
 船員にそう命じる。
 
 応、と船員達が応じた。

 白地に青の『花の聖母マリア』のメインセイルが風をはらんで広がった。

 船がセビリアを出て行く。



 岸で、エレナが大きく手を振っているのが見える。

 私も、皆も、彼女が見えなくなるまで手を振り続けた。



 良い子でしたね、とロクサーヌが言う。

 ああ、と私は答えた。


 私の胸に残ったロザリオが、風を受けてくるくると回っている。



 約束は守ったよ、フェルディナントさん。

 
 私は呟いた。

 
 そして…また新しい約束もできた…それでも、いいだろう?、と天を振り仰ぐ。


 運命の輪。


 得てして、運命は円を描いてくるくると回るものだ。

 このロザリオもまた然り。

 くるくる、くるくると世界を回り、そしてまた始まりの、このセビリアに戻ってきたのだ。

 私は遠くなるセビリアを振り仰いで呟いた。

 くるくる、くるくると、運命の輪は回る。 

 世界を回る。 


『ルール60 <約束は守る>』

~『Circumnavigation編』~    完 
[PR]
by Nijyuurou | 2007-10-09 00:17 | 『Circumnavigation』

『対決』

9月18日、ジブラルタル沖。

 港に船が入ると、本当に帰ってきた、と言う実感がしたものだ。

 遠くに港が見えていたうちは、まだ長い航海の続きだという気がしていた。
 だが、船が実際に港へと滑り込むと、航海の終わり、と言う実感がどっと沸いてきた。

 これまでの航海のことが頭をよぎる。

 エレナと出会ったラスパルマス、パタゴニアの風、『平和の海』、ワンガヌイ、レガスピ、ディリの戦い……。
 
 不思議なことだが、帰ってきた実感とともに、振り返ったその記憶達には実感がなかった。

 本当に私は、あの光景を目にしていたのか、それを疑いたくなる。

 地の果てを越え、『平和の海』を渡った私が、ここで再びセビリアに帰ってきた、と言うことが、まるで夢のようだった。

 だが、エレナが呟く。
c0124516_21324640.jpg
 
 そう、私達は確かに帰ってきたのだ。
 
 そして、記憶を辿るうち、私は、ふと大変なことを思い出して、ロクサーヌに服を着替えるように言った。

 ロクサーヌは、舞踏会があるでしょうか、とウキウキと答える。

 …何を言ってるんだ……。

 出発時、船長として登録をしたのはお前だろう、と言うと、とロクサーヌはすっかりそんなことは忘れていた、と言う顔で一言、あ、と呟くと真っ赤になった。

 船員達がどっと笑う。

 船に、ようやくいつもの穏やかな雰囲気が戻ってきていた。

以後世界周航の記録…未完の方、『とても!』『凄く!』『絶対に!!』御注意!
[PR]
by Nijyuurou | 2007-10-08 21:20 | 『Circumnavigation』

『捨て錨』

9月17日、カナリア沖。

 カーボヴェルデを出て、北へと向かう。
 
 皆、ひどくピリピリしていた。

 海賊の出没する周辺だが、問題その事、ではない。

 この先、待ち受けているだろう、エルカノの追手である。

 私は見張りの数を倍に増やし、航海を続けた。


 そして、船はとうとうイベリア半島の南に差し掛かった………………。

以後世界周航の記録…未完の方、御注意!
[PR]
by Nijyuurou | 2007-10-06 23:43 | 『Circumnavigation』

『敵の姿』

9月17日、ディリ。
 
 テルナーテからディリへと向かう途上で、私達はエルカノが放ったと思われる追っ手と遭遇。

 追っ手からは無事逃げ切ったものの、今度はその事にショックを受けたエレナが、漁船を盗んで姿を消した。

 私達を危険にさらすまい、と言う気持ちから出たものだったが………全く、事態をさらにややこしくしてくれるものだ。

 結局、エレナは海賊に襲われていたところを無事保護した。

 …勝手な行動を取った罰として、エレナには10日間の朝飯抜きという過酷な処置を下し、私達は次の港を目指す。
 
 出航所の役人の話によると、次の目的地は、モザンビーク………よく知った港である。

以後世界周航の記録…未完の方、御注意!
[PR]
by Nijyuurou | 2007-10-01 23:45 | 『Circumnavigation』

『朝飯抜き』

9月15日、ディリ。

エレナが、盗んだ漁船で走り出した。

 セビリアに向かって。

 一体何を考えてるんだ……。

 ともかく、船が盗まれたのはつい今し方の事のようである。
 
 さほど遠くまでは行っていないだろう。

 海賊が出るとは言うが、港の側…しかも明らかに漁船と分かるような船を襲うようなこともあるまい……。

 そう自分に言い聞かせながら外洋に向かった。

以後世界周航の記録…未完の方、御注意!
[PR]
by Nijyuurou | 2007-09-30 23:06 | 『Circumnavigation』

『逃走』

 9月13日、ディリ沖。

 『花の聖母マリア』号のすぐ横に着弾。

 凄まじい水しぶきが上がり、冷たいものが頬に飛び散ってくる。

 私達は、突如戦艦に囲まれ、砲撃を浴びていた。

 何がどうなってこんな展開になったのだろうか………。


 率直に言うと、ふざけるな、だ。
 
 はっきり言って、世界周航航路をディリまで来て、海の藻屑になるのは御免である。


 何とか逃げ延びるしかない。

以後世界周航の記録…未完の方、御注意!
[PR]
by Nijyuurou | 2007-09-25 23:48 | 『Circumnavigation』

『密輸商の理』

 9月12日マニラ。

 手記を読み進めるうち、いくつもの新たな真実が浮かび上がった。

 だが、私達のするべき事は変わらない。

 この手記を持って、エレナを連れ、セビリアに帰る。

 協力を約束してくれるレガスピと別れ、私達は再び船上の人となった。

以後世界周航の記録…未完の方、御注意!
[PR]
by Nijyuurou | 2007-09-23 23:55 | 『Circumnavigation』

『下手な芝居』

9月11日、マニラ。

 ようやく発見した手記…。

 その手記に掻かれていたのは、フェルディナントさん…マゼラン提督の、死の様子、だった。

 …だが、マゼラン提督の死で手記は終わっていない。
 
 大体、アントニオ・ピガフェッタはこの戦いを生き延び、記録を残し……本国のイタリアに帰国しているという。

 その彼が何故、貴重な記録をここに置いていったのだろうか。

 私はさらに手記を読み上げていく。

以後世界周航の記録…未完の方、『絶対に!!』御注意!
[PR]
by Nijyuurou | 2007-09-20 23:57 | 『Circumnavigation』

『手記』

 9月10日、マニラ。

 私達は街役人の紹介でイスパニアのコンキスタドーレス、レガスピに面談した。

 彼の言うところによると、やはりエレナの持つロザリオは私がフェルディナンドさんに渡したもの……マゼラン提督の持ち物に間違いないという。

 そして、それを持つエレナは、フェルディナンドさんの一族ではないか、というのだ。
 
 しかし、手記については有益な情報を得ることは出来ず、その存在すら疑わしくなってきた。


 …一方で、レガスピはフェルディナンドさんのが残したという幼児キリスト像を探してみないか、と持ちかけてくる。

 有益な情報がない今、あの人が残したものを探してみるのも、悪くないか………。

以後世界周航の記録…未完の方、『絶対に!!』御注意!
[PR]
by Nijyuurou | 2007-09-18 23:57 | 『Circumnavigation』

『レガスピ』

 9月9日、マニラ。

 ワンガヌイから指定された次の港は、このマニラだった。

 セビリアでディエゴ老人に依頼された手記が隠されているという、そのマニラである。
 
 街役人から話を聞いてみたが、問題の手記のありかは判然としない……。

 ただ、エレナのロザリオを見た役人は血相を変え、私達に紹介状を書いてよこした。

 事情はよくわからないが……とにかく利用させてもらうことにしよう。

 
 紹介状の宛名はロペス=デ=レガスピ…イスパニアのコンキスタドーレス(征服者)である。

以後世界周航の記録…未完の方、御注意!
[PR]
by Nijyuurou | 2007-09-16 23:28 | 『Circumnavigation』