大航海時代online Boreasサーバー  マルコの航海日誌


by Nijyuurou
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カテゴリ:『アゾレスの亡霊』( 10 )

『Epilogo』

9月15日、リスボン。

運び屋>なるほど…、幽霊船出現の裏にはそんな悲話が隠されていたのか…。あんたに渡した指輪が偶然にもその指輪だったとはな…
 
 頷く運び屋に、私は真っ赤になった頬を押さえながら、おかげで俺は死ぬところだった、と苦情を言った。
 運び屋は、私の頬を見ながら、どうしたんだ、大丈夫か、と不審そうな声を上げるが、私は、これは良いんだ、別口だ、と手を振った。
 
運び屋>あの指輪は初老のかなり身なりの良い主から依頼された物なんだが、届け先はリスボンとしか書かれてなくてな。もう数年も届け先が分からないから、保管していた物なんだ

 しつこく私の方を見ながら、運び屋は指輪についてそう説明した。
 私は憤慨し、人様に出所不明な代物を渡すなんてとんでもない奴だ、と叫んだが、運び屋はしれっとした顔で、お前がいつもやってることだろう、と悪びれない。

 私は一瞬言葉に詰まり、フン、と鼻を鳴らした。

運び屋>まぁ、その恋人たちも可哀想だが、最も救われないのはその貴族かもな…。その後の人生がいかに侘しいものか…

 運び屋は私の顔を見てニヤリと笑い、腕組みをして首を振って見せた。

 私は、肩をすくめた。  
 

 おそらく、あのオポルトの老人が件の貴族なのだろう。
 そして、指輪をリスボンに送ったのも。

 だが、それももう終わったことだ。


 …実は、私はこのふざけた運び屋のところに来る前に、私は老人のところに報告に行ったのだ。
 
 老人は以前と同じように埠頭で海を眺めていた。
 
 事情を説明すると、老人は静かに笑顔を見せた。

老人>指輪とバラの花束を…。航海者さん、いろいろと世話になったの。彼らの仲を裂いてしまった貴族も、2人の幸せを心から願ってるはずじゃ。

 だが、それは初めてあった時と同じ、苦い苦い笑みだった。

 過去を取り戻すことは出来ない。
 結局、人間に出来ることと言ったら、ツケを払うことくらいなのかもしれない。
 
 ツケを払った老人の、何が変わっただろうか。

 本当にそれですべてを割り切れるだろうか……。

 せいぜい、一人の女との、長い長い関係に、ようやく終止符が打たれたと言うくらいのことなのだろうか・・・。


 いずれにしても、過ぎ去った時は戻ってこない。

 愛する女を失った老人の過ごした、長い長い、時は。

 もっとも救われないのは、この老人だったのかもしれない。


 だが、私は知っている。

 この男も、やはり、オーレリアを愛していたのだろう。


 狂おしいほどに。

 
 …もっとも、それも私の想像に過ぎない。
 
 だから、私はただ、運び屋に肩をすくめて見せた。


運び屋>お礼に渡した指輪を持ち主に返してやったんじゃ、あんたの手に残るものが何にもねぇよな? これをあげるな!

 上機嫌の運び屋は、私に包みを一つ、投げてよこす。

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 開けてみると、それは青銅製の古めかしいグローブだった。
 指が動かし安いように、一部のパーツに細工がしてある。

 大砲の装填に便利かな、と思う。

運び屋>ほれ、これも数年届け先が不明の品物だ。もしよければもらってくれ

 ………またか。
 まあ、貰えるものは貰っておこう。

 私は運び屋に礼を言って、立ち上がった。

運び屋>まぁ、あんたのおかげでもう臆することなく仕事に専念できそうだ。航海者さん、忙しいところオレにつきあってくれてありがとうな。また世界のどこかで会える日を楽しみにしてるよ!
 
 笑顔の運び屋、渋い顔の私。
 明暗分かれた感じで、私達は別れた。

 やれやれだ。

 結局ただ働きに近い仕事になった。
 私は運び屋と別れ、酒場へと歩く。
 
 酒場に着くと、すでにドゥルシネアはできあがっており、ハーフェズはいつものように涼しい顔でビールを啜っていた。

 私の顔を見るなり、ドゥルシネアは、またただ働きね、と頬を膨らませる。
 口をへの字に曲げて見せたが、それで勘弁してくれるような手合いではなく、もう、ちょっとは懲りてよね、と耳を引っ張られた。
 私は、いや、もう懲りた、と答えた。
 ハーフェズが、美人の幽霊だったな、と眉を寄せてみせる。
 
 そうなんだ。

 あの高台の女、どうもオーレリアの親族らしくて、いや、あの女も美人だったが、肖像画を見せて貰ったんだよ、オーレリアの…本当に美人だったんだぜ………

 私は一息にそう言うと、テーブルの上のラム酒のグラスを掴み、一口に飲み込んだ。

 ハーフェズが、全然懲りてねえな、と呆れ声で言った。
 
 ドゥルシネアは瞑目し、そんなこと言ってると、また幽霊が寄ってくるわよ、と怖い顔をしてみせる。

 私は笑い返した。

 今度はコブ付きじゃなくて、独り身の美人の幽霊を頼む。

 ハーフェズが笑い出した。
 ドゥルシネアもつられるように。
 もちろん私も。


 そして私達はまたグラスをぶつけ合い、乾杯の歓声を上げた。 

 

 私の名はマルコ。

 ジェノヴァの密輸商、そして冒険者。

 美人の依頼ならば、いつだって大歓迎だ。

 たとえ、貴方が幽霊でも。


<ルール : 科学で割り切れることばかりではない>

『アゾレスの亡霊』 ~  FIN
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by Nijyuurou | 2008-09-16 02:20 | 『アゾレスの亡霊』

『Gone with the Wind』

9月15日、リスボン。

放浪の祈祷師>またあんたかい? まったく人使いの荒い人だね。まあ今までのよしみもあるから、今回は特別にタダでみてあげるよ

 祈祷師は私の顔を見るなりそう言った。
 別れ際に今度は三つ持ってこいとか何とか言っていたわりには、なかなか可愛いことを言うじゃないか。

 私はニマニマして、ウイヤツウイヤツ等といいながら祈祷師に老人の話を伝えた。
 祈祷師は突っかかってくるかと思ったが、なんとひどく真剣な顔で、指輪を見せてみな、と私を促す。
 少々毒気を抜かれ、指輪を取り出して祈祷師に渡したが、彼女は指輪を手の中で転がしつつ、じっと目を閉じたまま、黙り込んだ。

 私達も祈祷師のただならぬ様子に思わず黙り込む。
 

 しばしの沈黙の後、祈祷師は目を開けた。
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by Nijyuurou | 2008-09-15 22:32 | 『アゾレスの亡霊』
9月13日、オポルト。

 ポルトガル西海岸は今日もひどい風だ。
 天気は悪くないのだが、海からの風は先日からどんどんひどくなり、今も索具を引きちぎらんばかりに吹荒れている。
 これが物語ならば主人公の行く手を暗示して…とでも書くのだろうが、現実には冗談でもそんなことを口にしたくないものだ。
 
 と、いうわけで、私は黙ったまま、仏頂面で、オポルトの埠頭を歩いていた。

 祈祷師の話が確かならば、どうやら、先日の埠頭の老人が、今回の一件の鍵を握っている………らしい。

 それで再びこうしてノコノコオポルトまで戻ってきたというわけだが……。
 あの老人は、まだいるだろうか……。

 こんなことになるなら、以前来た時にもっと突っ込んだ話をしておけばよかったんだ、と思われるかもしれないが、それは結果論というものだ。
 後悔はしていない。
 しかし、あの老人を見つけることが出来なければ、また調査は暗礁に乗り上げることになる。
 それだけが不安である。

…だが、それは杞憂で終わってくれた。
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by Nijyuurou | 2008-09-14 01:51 | 『アゾレスの亡霊』

『験の悪いお話』

9月10日、リスボン…酒場。

 どうしてそんな危なそうな依頼受けたのよ、とドゥルシネアが不平を漏らした。
 験が悪いな、とハーフェズが呟く。
 私は口をへの字にして、俺一人悪者かよ、と言い返した。
 
 当然、と、二人はステレオで言い切った…。 

 幽霊船の再調査について相談した時の副官達の反応である。

 私は憤慨し、俺は最初からいやだって言ったじゃねえか、と反論したが、ドゥルシネアは笑顔でなんのことか、わかんないー、と、やはり言い切った。
 
 私はおもわず溜息を吐いた。
 
 …この手の話は、不思議と、おもしろがって首を突っ込んでいると、寄ってくるものなのだ。
 たとえ、最初はなんのことはない冗談でも、それがいつの間にやらヤバめの話になっている、と言うことが時としてある。

 はっきり言い切っておく。

 私は幽霊船が怖い。

 その上、験が悪い。
 怖いものは出来るだけ避けておくのが私の信条なのだ。
 
 ……もっとも今回は失敗したが。
 
 私は口をへの字にしたまま、もう一度溜息を吐いた。
 ハーフェズが釣られるように溜息を吐いて、まあ、受けたものは仕方がない、と言い、ビールを一口啜ると、差し当たってどうするんだ、と続けた。
 私は酒場の隅の方で若い娘や主婦達に囲まれている謎の民族色丸出しの物体を指さして、あれに頼るしかないだろう、と、眉を寄せた。
 この間の占いも当たってたしな、とハーフェズが頷く。

 私はフルーツの盛り合わせを手にとって、祈祷師の方に歩み寄った。
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 後ろの方で、私、恋占いでもしてもらおうかなー、というドゥルシネアの太平楽な声が聞こえてきて、私の精神に負担を掛けたりもしたが、まあ、それは良い………。

祈祷師と言えば…
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by Nijyuurou | 2008-09-11 00:03 | 『アゾレスの亡霊』

『幽霊船』

9月9日、リスボン。

港湾地区を、件の運び屋のところに向かって歩く。

 おかしな事に、港にはどことなく騒然とした雰囲気が漂っていて、道行く船乗りの顔は一様に緊張していた。
 寝不足の欠伸を連発しながら、アホ面下げて歩いているのは私くらいのものだ。

 …この間からこの港はトラブル続きなのか、とは思ったが、ヘタに顔見知りに顔でもかけると、またトラブルに巻き込まれる可能性もある。
 私も、自分のトラブルを抱えているのだ。
 で、ある以上、妙な雰囲気に気付かないふりをするのが吉である。

 

私は真っ直ぐ例の運び屋のところへ向かった。
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by Nijyuurou | 2008-09-10 22:25 | 『アゾレスの亡霊』

『夢の中で…』

 リスボン、日の出前。

私は、大声を上げて飛び起きたらしい。
 船長室にちょうど当直をしていたの船員頭のマイクロフトが、どうしたんですかい、と飛び込んでくる。
 汗びっしょりの私は、悪い夢を見た、と呟いた。
 常になく、真っ青な顔をしていたという。

とにかく、ひどい夢だった。
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by Nijyuurou | 2008-09-08 23:04 | 『アゾレスの亡霊』

『刻印の指輪』

9月7日、オポルト。

 あのおかしな祈祷師に言われるがままにオポルトまできてしまった。

 リスボン近くの埠頭のある街、と言うことだが、私の記憶ではこのオポルトくらいしかないはずだ。
 ……祈祷師等という非科学的なものを頼りに調査をしているというのは、大変不本意な気持ちだ。
 天気はと言えば、雲は低く垂れ込め、いやな風が海から吹いてきており、ますますやる気を減退させてくれている。

 私は口を半開きにして、露店で買ったバーベキューを両手に持って、ブラブラと埠頭の方へ歩いていった。

すると、である。
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by Nijyuurou | 2008-09-07 23:24 | 『アゾレスの亡霊』

『八卦』

9月5日、リスボン。

 それで、その祈祷師はどこにいるんだ?ひょっとして、またラサまでもどれってのか?

 私はこめかみを引きつらせながらハーフェズにそう尋ねた。
 ハーフェズはラム酒を口に運びながら、首を横に振り、いや、お前の後ろにいる、と答える。 
 何だとう、と答えて振り返ると……


 

そこには…。
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by Nijyuurou | 2008-09-06 23:33 | 『アゾレスの亡霊』

『非科学』

9月3日、リスボン。

 突拍子もない話である。

 何でも、アゾレス付近に幽霊船が出るために、新大陸へ向かう船がなかなか出航出来ないというのだ。
 呆れてものが言えない私に、運び屋は憮然とした顔で、冗談じゃねえんだ、と溜息を吐き、そして…マルコ、そういえばお前、礼さえもらえば何でもするっていってたよな…そういって、意味ありげな視線を私に向けてくる。

 だが、私は、二の句を待たずに、生温い笑顔で首を振った。
 
 運び屋は、俺はまだ何にも言ってねえ、と眉をしかめたが、私は、幽霊船の調査だなんて非科学的な調査はしないぞ、と断固として言い切った。
 
 その瞬間、後ろから、少女……私の副官、ドゥルシネアがひょいっと顔を見せた。
 彼女は、怖いんでしょ、と、ひどく意地の悪そうな顔で私の顔を見て、今度は運び屋に向かって、うちの船長、幽霊が嫌いだから、と訳の分からないことを言い始める。
 今度は、そうか、そりゃあ悪いことを頼もうとしたな、と、運び屋の方がひどくバカにした顔をする。

 ………私はつい勢いで、やれば良いんだろうが、と、叫んでしまった。

そして、数時間後……。(怖い内容を知りたくないものは見ない方がイイが…)
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by Nijyuurou | 2008-09-03 22:55 | 『アゾレスの亡霊』

『リスボンの怪』

9月1日、リスボン。

 何かがおかしい。

 何が?

 久しぶりに帰ってきたこのリスボンが、だ。
 港にさっぱり活気がないのである。

 なるほど、小型船はいつものように頻繁に出入りをしているし、北海や地中海を回る中型商船も行き来している。
 ところが、だ。
 新大陸に向かう大型船が、港に何隻も停泊したままでいるのだ。
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 …どう考えても、何かがおかしい。

 たとえれば、劇の主役が一向に舞台に姿を見せないとか、軍隊の主力が戦場放棄をしているとか、そういう状態である。

 そして、こういう状況は私にとっても好ましい状況ではない。 
 
 密輸商の仕事はお金持ちがいてこそ成り立つのである。
 リスボンの経済にあまりに停滞されれば、私の見つけてくる訳の分からない大変趣味の良い品物を買ってくれる酔狂好事家の皆さんの数も減ってしまうと言うものだ。 
 そうなれば、早晩私の口は干上がるし、そうなる前に本拠地で会計をしているロクサーヌのヒステリーが爆発するだろう。

 ともかく、このおかしな状況がいったい何なのか、掴んでおく必要はある。

 幸い、この街には知り合いも多い。
 港湾地区に顔を出しブラブラしていると直ぐに見知った船乗りを見つけることが出来た。
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 ところが、だ。

 よお、と声を掛けると、そいつはしばらく私の顔を見つめ、それから悲鳴を上げて、聖母マリアに祈りを捧げ始めた。

 私は一瞬あっけにとられ、どうしたんだ、と聞いてみると、何と、お前は死んだんだマルコ、ときた。

 ………どうやら私の死亡説はここまで流れていたらしい。

 私は少々憮然として、俺は生きてる、というと、そいつはようやく顔を上げて、何だ、ホントに生きてるんだな、と心底ほっとした顔をした。  
 それがあまりに心底から、と言う様子だったので、私は今度は腹が立つと言うよりもおかしくなって、いつからそんなに信心深くなったんだ、とその船乗りに尋ねる。

 そいつは、最近はどの船乗りだって信心深くしてらあ、と吐き捨てるように言った。
 一体どういう風の吹き回しだ、再び、呆れたように言った私に、そいつは青い顔で首を振って見せた。

 そしてこういったのだ。

 マルコ、お前何も知らないのか、あの幽霊船のことをよ、と。
 

<ルール・密輸商も死なず>
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by Nijyuurou | 2008-09-01 22:49 | 『アゾレスの亡霊』