大航海時代online Boreasサーバー  マルコの航海日誌


by Nijyuurou
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<   2007年 10月 ( 12 )   > この月の画像一覧

『浮き世舞台の花道は』


10月29日、イスタンブール。

 ドゥルシネアの訓練を兼ね、東地中海を航海して回る。

 インドに長く滞在していた間に、まだいくらか新しいスキルを覚える余裕ができて、私はサルベージを覚えることにした。


 そのついでに、イスタンブールまで足を伸ばしたところで、古い友人にばったりと出会った。

 ハーフェズ。
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 オスマン人ではあるが、妙に気が合う男で、故買屋古物商のところで何度か顔を会わせたことがある盗賊美術商だ。
 私は密輸商発掘家、彼は盗賊美術商…お互いの縄張りが違う扱うものが似ていたこともあり、獲物の情報を交換美について語ることなどもしきりで、いつしか腐れ縁に親しくなっていた。
 
 その彼が、船に乗りたい、と言う。

 どういう心境で、と尋ねてみたところ、何でも、盗みに入った仕事中にドジを踏んで顔を見られ広い世界を見て回り、新しい獲物美の世界を探したいと言うことであった。
 しかし友人とはいえ、職業盗賊を船に乗せておく程私は甘く陸の生活の長い者が突然航海を始める事の辛さを考えてみれば、とても船に乗せる訳にはいかない。
 ふざけるな、苦労の多い道なのだ
 だが、それを伝えたところ彼は嫌な爽やかな笑みを浮かべ、マルコ、俺は捕まったらお前の悪行を吐いてしまうかもしれないそんな苦労は最初から覚悟の上さ、と答えた。
 私は額に青筋を浮かべつつ少々当惑したが、海に落っこちないように気を付けとけよ、錘付きでな無理をしないでくれ、辛くなったらいつでもこの街に帰るよと苦虫を噛み潰したような顔で苦笑しながらそう答えた。

 腹黒よろしく、と私は言った。

 悪党ああ、よろしく、と彼は答えた。

 そして、私達は顔だけは笑顔で握手を交わしたのだった


 こうして、再び居候副官が二名になった。
 この野郎友人のことはロクサーヌもよく知っている。
 
 彼女が知ったら目を回しそうだ。 
 

<ルール69 『表もあれば裏もある。』>
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by Nijyuurou | 2007-10-30 22:33
10月25日、ヴェネチア。

 人が負けるのは、いつだろうか。

 誰かが勝ち負けを決めた時?

 それとも、体が動かなくなった時?

 そうではない。

 人が負けるのは、心が折れた時だ。

『注意……おかえりと言えるまで、の内容を含む!』
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by Nijyuurou | 2007-10-27 23:29 | 依頼記録

『隣のリッチマン』

10月20日、リスボン。

 ふぁぶりす氏から、訳の分からない手紙が来た。


マルちゃんも、これでやっと一人前の姿に。

 
 なんのことだろうと思い、ちょっと考えてみると
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 先日のこれだ。


 これほどの侮辱はない。


 私はあまりの怒りに手紙を破り捨てると、即刻資金を集めて、この状況を脱することを、神とフェルディナントさんに誓った。

  

 とはいえ、あては無い…。

 差し当たってインドから持ち帰った胡椒を捌いてみるものの、50万ドゥカートほどの儲けにしかならない。
 焼け石に水である。
 いったん考古学者に戻って、盗掘でもするか、と考えていると……。

 なんと、沈没船の地図断片を一枚100万ドゥカートで売って貰いたい、と言う話が舞い込んできたのである。 
 インドで海賊から収奪したものや、釣り糸に引っかかったものなどを会わせると8枚の地図断片が私の手元にはあった。

 迷わず、私はその話に飛びついた。

 幸い支払いもキャッシュで、あっという間に800万ドゥカートの収益。


 なんとか靴と服は調達ができた………。


 だが、余裕を持って海事訓練に戻ろうと思えば、まだ足りない……。

 そこで、私は海事職のままでも発掘が可能な、生産用品を調達して資金にすることに決めた。

 あれを掘るのは正直手間の掛かる作業なのだが、
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 とにかく掘り、
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 そしてまた掘りまくる。

 結局、この日は4本を調達し、いつものようにバザール。


 1本200万ドゥカートで、やはり800万ドゥカートの儲けだ。


 1500万ドゥカートが、再び口座に振り込まれる。


 ノウキンとは言わせない…………。

 資金はともかく、それが一番大きい……………………………。



『ルール67・<スマートに稼ぐべし>』  
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by Nijyuurou | 2007-10-24 23:08

『文無し』

10月20日、カリカット。

 良く聞かれることがある。
 
 「交易をしないで、よくやっていけますね」と。

 交易をしない、というのは一見収益の道を絶たれたように見えるが、実際はそんなことはない。
 

例えば、だ………
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by Nijyuurou | 2007-10-22 23:49

『カリカット寸描』

10月14日、カリカット。

ケンジュツの修行に挫折した私だったが、海事をやめてしまった訳ではない

 差し当たっては、早い段階で白兵戦の腕を上げておこうと思い、良い修行場を探していると、インド海賊を狙うのが良い、と言う話を耳にした。
 ナオ嬢にその話をすると、危険すぎる、と止められたが、突撃で何とかすると答え、突撃の弱点についても
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 そう強硬に主張して、私はインドに向かった。


 ………どうも、何かの修行となると、いつもインドに来ている気がするが、これも運命というやつだろうか。


 ともあれ、修行を開始。
 スキル自体はまずまず快調に上がっている。
 
 また、ハバナの時よりも知っている航海者を多数見かけることがあったが、やはり大都市は違うな、と思った。

 例えば、なんの関係もない鯖氏とイングウェイ氏を同時に見つけたり…
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 インドと言えばこの人のラン嬢を冷やかしてみたり…
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 ………ああ、アワビ嬢に粗末と言われたこともあった………
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 ちょっと心を癒されたのは璃花嬢の
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 である。
 アデイル嬢がかつて、「お気に入り」と言っていたが、彼女の「ありがとう」は何となくほっとする。
 とても真似は出来ないが、私もお気に入りだ。

 そんな中、
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 と、声を掛けてくれる人もいた。
 
 今までも時折声を掛けてくれる人がいたが、いつ聞いてもちょっと励みになる言葉だ。
 有り難い限りである。

 当時は必死で世界周航の記録をまとめていたので、言及出来なかったのだが……ここで追記しておこうと思う。

 ありがとう^^


<ルール67 『ヘタな物真似をしないこと』>
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by Nijyuurou | 2007-10-18 23:53

『新しい帽子。』

10月12日、オポルト。


誰にでもこだわり、と言うやつがある。

 特に着るものに関しては、皆それぞれこだわりがあるのは当然で、うちの副官達も着るものにはうるさく、下船した際の普段着は言うに及ばず、船の中で着ている作業着に関しても、いろいろとうるさく注文を付けてくる。

 この私にも、もちろんこだわりがある。
  
 帽子である。

 特に、ピューリタンハットがいい。

 私はあのシンプルなフォルムが帽子というものの姿を極限まで突き詰めたものだと思う………。
 
 ところが、このピューリタンハットは少々問題があり、冒険者以外は装備出来ない。
 あの帽子を被るのに職業を問うのは、正直いかがなものかと思うが、そうなっている以上は従わなくてはならないのが辛いところだ。
 残念ながら、私は現在海事職に転職してしまい、それと共にピューリタンハットは脱がざるを得なくなってしまった。

 とはいえ、帽子は被らないと様にならないし、力が出ない。
 
 そこで、ピューリタンハットに変わる帽子を探して色々探しては見たのだが………。

 まず、ソンブレロを被ってみたが、少々品がない。

 次にバイコルヌを被ってみたが………
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 やはり今ひとつしっくり来ない。
 他にも、ニット帽を被ってみたり、はたまた帽子無しを試してみたりもしたが、どうもいけない…。

 どうしようか、と悩んでいたところで見つけたのがこれ。
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 ベレーである。

 被ってみると、意外としっくり来た。
 
 何となくだが、海事向きのような気がする。

 汚れには強いし、洗いやすいし、少々乱暴に扱っても型くずれしない。

 いずれ、このベレーが各国の海軍……ひょっとすると軍隊の連中にも正式に使われる日が来る……かもしれない。


<ルール65 『帽子と靴を着用のこと』>
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by Nijyuurou | 2007-10-16 23:49

『憧れのカリブ航路』

10月10日、セビリア。

 逃げるようにハバナから戻り、セビリアの冒険者ギルドに顔を見せると、マスターが待ちかねたぞ、と出迎えてくれた。
 これは何かあるな、と思っていると、案の定、タベラ枢機卿のところに顔を見せろと言う。
 仕事の依頼だという話だ。
 世界周航の際に世話になった人でもあることだし、私は軽い気持ちで依頼を引き受けることにし、王宮の裏口から彼のところへと向かった。
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 枢機卿は、どうも私の航海者としての腕を買ってくれたようで、航路の開拓を依頼したいという。
 私は詳しい話を聞く前に即座にその依頼を受けた。
 ………この枢機卿、人物的にはなかなかイイ人物である。
 良いところを見せておいて損はない。
 私はそう判断した。

 そして、開拓して欲しい航路というのが、
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 これだ。


 やめとけばよかった。


 カリブからはつい先ほど戻ってきたばかりだ。
 
 そのカリブに今度は80日で往復というと、もうこれはまるきり馬鹿である。

 事情を聞いたマイクロフトが、依頼を破棄しやすか、と尋ねてくる。
 ロクサーヌが、それはできませんね、と溜息を吐いた。
 当然である。
 これで依頼を破棄しようものなら、枢機卿に良いところを見せるどころか、全くの逆効果だ。

 まさに馬鹿だ。
 
 出航所に言ってみると、やる気満々の役人が手続きをしてくれた。
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 また溜息が出た。

 この日は軍人達の集まりがあったようで、オポルト沖で砲火による会談が行われ、そこはかとなく物騒な海域になっていたが、私はその横をこそこそとすり抜けて西へと向かう。
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 もっとも、サントドミンゴは私の感覚ではさほど遠い場所ではない。
 インドに行くよりはずっと簡単だ。

 海賊が出る訳でもなければ、クラーケンも出なかった。

 余裕を持って到着。
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 出航所の役人が潮目と風に注意して行くように教えてくれるが、期限まではまだ十分にある。

 とりあえずワイラの顔でも見て帰ろうかと思って酒場へ行ってみると、珍しく酒場は大入りになっていた。
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 と、その中の一人が、
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 と声を掛けてきた。
 私は、いろいろとある『身に覚え』と言うやつを思い起こしたが、別にそう言う恐ろしい話ではなく、チョコ嬢が以前に所属していた商会の人であった。

 みんなで椅子に腰掛け、四方山話をするが、やはり話は共通の知り合いのチョコ嬢の話になる。
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 チョコ嬢が最近靴を履かない、と言う話をすると、
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 即座にこういう答えが返ってきた。

 連中が靴を履かないのは、他の商会にまで知れ渡っていたのかと思い、ちょっと額に青筋が浮いた。

 思わず長話をしてしまったが、なかなか面白い話が聞けた。
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 さて、酒場の人々と別れ、こちらは一路セビリアへ。

 帰りも問題のない航海だ。

 ドゥルシネアがぶつぶつと、なんでこんなところ往復してるんだろう、とふくれ面をしているが、理由はこっちが知りたいくらいだ。

 なんでこんな流れになったのだろうか……。

 
 ともあれ、セビリアに帰航、枢機卿に報告すると、
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 いつものように感激してくれたうえ、遠洋航海免状、とやらをいただいた。



 ・・・。


 ………………………………あまり使えない……………………………。



<ルール64 『仕事はきちんと話を聞いてから受ける』>
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by Nijyuurou | 2007-10-15 23:45

『サムライへの道』

10月8日、ハバナ。


 色男 金と力は なかりけり。

 それが私のモットーだ。

 で、あるので、私はこれまで剣術にはさほど興味を示さなかった。

 ところが、私は世界周航が終わってからと言うもの、このハバナで剣術の修行に明け暮れている。
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 理由はこうだ。

 先日、マニラまで行った際、酒場で喧嘩があった。
 
 酒をこぼしたとか、こぼさないとか言うことで喧嘩になったようだが、その当事者というのが面白く、変わった衣装に身を包んだ男で、酒場のマスターの話によると、ジパングから来たらしい。
 私の名前はかのジパングを発見した、マルコ=ポーロから貰ってきたそうで、マルコの話を聞いて育った私もやはりジパングには興味津々である。
 
 見ていると、男は手にした曲刀を華麗に操って相手を叩きのめし、ミネウチだ、死にはしない、と静かに言ってのけた。

 私は感動した。

 早速、そのジパング人に一杯おごり、男の剣術について、様々な質問をぶつけてみる。

 シンカゲリュー、とか言うらしい。
 カミイズミーとか言う、大変なブシドーマスターが編み出した、ケンジュツという話だ。
 私はあまりのことに感動し、そのジパング人のサムライに高い授業料を払ってシンカゲリューを教わることにした。
 マイクロフトが、呆れた顔で、また始まった……とか言っていたようだが、自分を磨くために金を惜しんではいけないと、私は断固として言い切った。

 そして、そこそこ様になってきた私は喜びのあまり、俺はサムライだ、と豪語して、ロクサーヌにケンジュツのカタを披露して見せたのだが、ロクサーヌは片眉をつり上げると、訳が分かりません、と、笑顔で言った。
 ドゥルシネアに至っては、奇妙な生き物だ、と短く言って人のことを指さす始末であった。

 私は当然怒り狂い、しかし、その怒りを露わにしても痛い目を見そうなので、グッとこらえて、私にはちょうどいい相手のいる、このカリブに船を回し、公然と密かに剣術の修行をはじめた、と言う訳である。


 剣術の専門家であるエリック氏も、こうやってカリブやカリカットあたりで剣を振り回し、腕を磨いたそうだが、曰く、陸戦で剣術を鍛えるのは、マゾヒスティックな行為、だと言う話だ。

 普通は海戦の中で、自然に鍛えていくもの、らしい。
 
 だが、陸戦でなくては得られないものもあり、
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 おかげさまで六段になった。


 そして、時折、そんなマゾヒスティックな陸戦に、参加していく人達もいる。


 まず、チップ氏。

 ちょうど私と同時期に海事訓練を開始したそうだが、海戦で修行をするのと比べて、剣術の鍛え具合はどうだろうと思って顔を見せた。
 それでは、と言うことで一緒に修行をはじめたが、どうもチップ氏は妙なオーラでも出しているのか、会う敵会う敵に狙われる。
 
 私の3倍は殴られていた。
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 怒りのあまりチップ氏が目つぶしを投げ、メデューサのなんとか、と言う聞くだけで物騒なアイテムをぶつけられた。
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 身動きが全く取れない状態で、目の見えないバッカニアが暴れ回る。

 死ぬところであった。


 次に、ナオ嬢。
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 バッカニアに殴られているところに妙な仮面を付けて風のように現れた。
 
 何でも、地図の断片を探しているのだとか。

 一緒に陸戦、と言われたのだが……。
 か弱い女性二人、私は大丈夫だろうかと思い、彼女たちに自信の程を聞いてみる。
 彼女の連れのぽぷり嬢はもうこの当たりでは熟練が詰めないという話だ。

 ……………話が見えてこない、と思い確認してみた。
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 彼女は恥じらうような表情を浮かべ
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 あまりの腕利きぶりに震え上がった私を引きずって、戦場へまっしぐらに駆けだした。。。。
  
 死ぬところであった。


 あまりに死にかけるので、私は少々自信を無くし、ハバナの街中へと戻って暫く心と体を癒すことにした。
 
 そこにやってきたのが、アリエル嬢。
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 真っ白なワンピースを身に纏い、いかにも清純派?という感じだ。

 だが、なんの話をしていたかというと
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 主にカレーと、カレーにパスタを入れたものの話である。

 ところが、どこでどう話を間違ったか、清純派という話になり、彼女が
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 等と言ったのを日記に付けておく、等と言ったため
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 死ぬところであった。

 
 ケンジュツは危険である。

 危険すぎる。

 私にサムライの真似事は無理だ。

 冗談でも、もう二度とサムライになるとは言うことはないだろう。


 それ以前に、何故この世にはこれほど危険があるのだろうか………。


<ルール62 『君子危うきに近寄らず』>
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by Nijyuurou | 2007-10-10 20:47

『Farewell miss Ellena』

9月19日、セビリア。

 すべてに決着が付いた。

 手記はタベラ枢機卿へと渡され、エレナはバルボサ家を継ぐことが決まった。

 私達と言えばいつもの通り。

 
 宴会だ。
 
 王宮にあのジブラルタルの追撃戦でも捨てなかった香辛料を持ち込ん料理を作り、豪勢な祝宴となった。

 寛大なことに、うちの乗組員達も参加を許された。
 
 貴族の中の物好きな連中が残って一緒に宴席に加わり、何とタベラ枢機卿までが参加した。

 前代未聞だという。
 
 だが、いい宴会だった。

 俺とマイクロフトが女装して踊りを踊って座を沸かせ、またロクサーヌとドゥルシネアがコンビで歌を歌う。


   …どんな嵐が来ようとも、心のオール離さずに…

 
 二人の歌声が謁見室を包む。


   …やがていつかたどり着くさ ただ一人 お前の岸辺へ … 
  

 そう、どんな航海でも、いつかたどり着くのだ。

 その船乗りの、帰るべき、岸辺へ。




 翌朝…出航所で『花の聖母マリア号』の出航準備を整えていると、エレナがやってきた。


 皆、いつもと変わらないように作業を続けている。

 エレナが、おはよう、と言って甲板に上がってくる。

 皆、いつものように、おはよう、と言って彼女を出迎えた。
 

 私はちょうど船尾で釣り糸を垂れていた。

 気付かないふりをして、釣り糸を垂れていると、エレナがやってきて、いつものように水を出してくれ、私の隣に座る。

 
 確か、彼女が乗ってきた頃にもこんな事があった。

 リオデジャネイロの沖だったと思う。

 今はそのころに比べてずいぶん日差しも穏やかだ。

 竿が引いた。

 慌てて上げると、いつものようにサバだった。

 エレナは黙って、座っている。

 私も何も言わなかった。

 ゆっくりと、けだるく、午後の時間が流れていく。 


 やがて、エレナがぽつりと、エルカノさん、どうなっただろ、と呟くように言った。

 エルカノはあれから近衛隊に取り調べを受けているらしいが……。

 なにしろ、私達の飲むはずだったワインの中から毒が出たのだ…前後の事情から、誰が疑われるかは明白だ。
 しかし、やつほどの名声があれば、事をうやむやにはできるだろう。

 …だが、もう香料諸島の権益に絡むことはできまい。

 あの航路の経営は早晩他の誰かの手に移るはずだ。

 そこまで答えて、だが…と私は言った。

 それだけだ。

 それ以上の事はない。

 エルカノはやはり、初の周航を成し遂げた男として、名前を残す。

 創業の提督がマゼラン……そして、マゼランの後を継いで、世界周航をやり遂げたのがエルカノ。

 いずれ、そう言う風に伝えられるようになるのではないか、と私は言った。


 そして、今度は私が、それで良かったのか、とエレナに聞いた。


 エレナは、にっこりと笑った。

 エルカノさんも、誇りある船乗りだったんだよ、きっと、と言う。

 私はエレナの頭を撫でた。

 偉いぞ、と言った。


 エレナはひどく嬉しそうに笑った。


 だが、笑っている顔がだんだんと崩れていく。

 泣いているのか笑っているのか。

 みんなとも、これでお別れだね、とエレナは泣いた。

 泣き声が海の上を静かに流れていく。

 ロクサーヌがハンカチを目に当てた。

 ドゥルシネアがやはりべしょべしょの顔で寂しいよ、と泣いた。

 船員達の間からも、鼻を啜る音が聞こえ、それにマイクロフトのとっとと作業をしねえか、という悲鳴のような声が被さる。
  

 私は黙って彼女の肩を撫でた。

 ようやく泣きやんだ彼女に、幸せにおなり、と言うと、彼女は、またあえるよね、とぐしゃぐしゃの顔を拭きながら言った。

 最後の最後で、ひどい顔じゃないか。

 またあえるとも、そう言うと、彼女はかろうじて笑った。

 そして、
 

ブエノスアイレスでのお礼、まだだったよね…これ…もらって!
 

 そういって、
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 あのロザリオを、私の手に押しつけてきた。

 私は苦笑した。

 そして、出しそびれしまったな、と言ってから、古ぼけたピューリタンハットを彼女に被らせた。

 
 彼女は、ありがとう、と嬉しそうにその帽子に手をやる。



 私は、思わず微笑んだ。



 その帽子は、君のお父さんのだったのだ、そう言うと、エレナは何のことか分からない、そう言う顔でこちらを見た。


 
 私は、若い頃のことを、彼女に話していた。


 フェルディナントさんの人柄、してくれた話、私の憧れ…。


 あの人が出て行った日のこと、そして、その姿………。


 その帽子は、その時にあの人が私に貸してくれたもの。


 そして、と私はロザリオを持ち上げた。


 このロザリオは、私があの人に貸したもの。


 いつか航海を終えて、この港に戻ってきた時、また、この港で返すと、そう約束したと。

 
 エレナは、それじゃあ、と絶句した。

 私は笑って頷いた。


 私はフェルディナントさんの友達だったんだ。
 

 ロクサーヌが、やっぱりそんなことがあったんですね、とため息を吐く。
 

 と…エレナが、輝くような笑顔を見せた。


エレナ>私、船乗りになろうと思うんだ…お父さんに負けないように!


 そうか、と私は頷いた。

 ロクサーヌも、頑張ってねと彼女の髪を撫でた。


エレナ>マルコさんに負けないように!

 
 思わず頭を掻いてしまう。

 ドゥルシネアが私の姿を見て、おかしそうに吹き出した。


エレナ>そうなれたら…いつか、どこかの海を、また一緒に旅したいなぁ

 
 応、と船員達が応じる。
 
 マイクロフトが、真っ赤な目で、待ってるぜ、と彼女の肩を叩いた。


 
 おーい、エレナ、と、ディエゴ老人の声が聞こえる。


 彼女は、彼女の岸辺に、帰らなくては。


 だが、彼女は渡し板へと向かいながら、


エレナ>………約束だよ!マルコさん!

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 もう一度、あの笑顔でそう言った。


 私は少し考えて、
 
 

ああ、約束だ。



 そう答えた。


 そして、彼女は甲板を降りていった。




 良い潮時だな、と私は思った。

 
 展帆!

 
 船員にそう命じる。
 
 応、と船員達が応じた。

 白地に青の『花の聖母マリア』のメインセイルが風をはらんで広がった。

 船がセビリアを出て行く。



 岸で、エレナが大きく手を振っているのが見える。

 私も、皆も、彼女が見えなくなるまで手を振り続けた。



 良い子でしたね、とロクサーヌが言う。

 ああ、と私は答えた。


 私の胸に残ったロザリオが、風を受けてくるくると回っている。



 約束は守ったよ、フェルディナントさん。

 
 私は呟いた。

 
 そして…また新しい約束もできた…それでも、いいだろう?、と天を振り仰ぐ。


 運命の輪。


 得てして、運命は円を描いてくるくると回るものだ。

 このロザリオもまた然り。

 くるくる、くるくると世界を回り、そしてまた始まりの、このセビリアに戻ってきたのだ。

 私は遠くなるセビリアを振り仰いで呟いた。

 くるくる、くるくると、運命の輪は回る。 

 世界を回る。 


『ルール60 <約束は守る>』

~『Circumnavigation編』~    完 
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by Nijyuurou | 2007-10-09 00:17 | 『Circumnavigation』

『対決』

9月18日、ジブラルタル沖。

 港に船が入ると、本当に帰ってきた、と言う実感がしたものだ。

 遠くに港が見えていたうちは、まだ長い航海の続きだという気がしていた。
 だが、船が実際に港へと滑り込むと、航海の終わり、と言う実感がどっと沸いてきた。

 これまでの航海のことが頭をよぎる。

 エレナと出会ったラスパルマス、パタゴニアの風、『平和の海』、ワンガヌイ、レガスピ、ディリの戦い……。
 
 不思議なことだが、帰ってきた実感とともに、振り返ったその記憶達には実感がなかった。

 本当に私は、あの光景を目にしていたのか、それを疑いたくなる。

 地の果てを越え、『平和の海』を渡った私が、ここで再びセビリアに帰ってきた、と言うことが、まるで夢のようだった。

 だが、エレナが呟く。
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 そう、私達は確かに帰ってきたのだ。
 
 そして、記憶を辿るうち、私は、ふと大変なことを思い出して、ロクサーヌに服を着替えるように言った。

 ロクサーヌは、舞踏会があるでしょうか、とウキウキと答える。

 …何を言ってるんだ……。

 出発時、船長として登録をしたのはお前だろう、と言うと、とロクサーヌはすっかりそんなことは忘れていた、と言う顔で一言、あ、と呟くと真っ赤になった。

 船員達がどっと笑う。

 船に、ようやくいつもの穏やかな雰囲気が戻ってきていた。

以後世界周航の記録…未完の方、『とても!』『凄く!』『絶対に!!』御注意!
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by Nijyuurou | 2007-10-08 21:20 | 『Circumnavigation』