『恋人達の幕間に』
2008年 11月 17日
ロンドン。
曇、北風。
私は片手にぶら下げた靴を、少女に差し出した。
彼女は丁寧に頭を下げると、でも、彼に伝えてください、そんな綺麗なネックレスよりも、貴方がいてくれればそれで十分です、そう言って、笑顔を見せた。
いい話じゃないか。
私は、ウン、分かった、とイイ笑顔で彼女に手を振った。
後ろで、ハーフェズが溜息を吐き、こんなことしてていいのか、と悪態を言った。
私は渋い顔で振り返り、あの石板なら、ぶっ壊すのはいつでも出来るさ、中身を調べてからでも遅くないだろう、と言い返す。
ハーフェズが、ならいいが、お前、グレンの言葉で冷静さを欠いてだろうな、と口をへの字に曲げた。
私は、勿論、と答え、ハーフェズはもう一度、ならいいが、と繰り返した。
グレンが石板を解読している間、我々はロンドンで、しばしの休息を取っていた。
とはいえ、完全に休んでいたわけではなく、ハロウィンで浮き立つ街で出会った
宝石職人(?)に、恋人の様子を見て欲しいと頼まれた。
この男、何と、仕事先の高価なネックレスを持ち出して、彼女に一度つけさせたいと思ったのだが……肝心の恋人が待ち合わせに来ないのだという。
預かりものを持って、ウロウロするわけにも行かず、何とか彼女を連れてきて欲しい……私達はそう頼まれた。
二つ返事で請け負って、様子を見に行ってみると、彼女はどうも靴を盗まれたらしく、今度は彼女の靴を探し回ることと相成った。
悪戯小僧を懐柔したり、
なんだかちょっと、あれ、な感じの吟遊詩人に
リュートを届けたりしつつ、何とか彼女の靴を回収することができた。
もっとも、依頼人の思うとおりに事は運ばなかったようだが。
……とはいえ、悪い結末ではない。
彼女の言葉を伝えると、宝石職人(?)は少し恥ずかしそうに笑い、浅はかでした、と頭を掻いた。
そして、お礼と言っては何ですがハロウィンの衣装に使ってください、と一着の仮装衣装を取り出した。
私とハーフェズは口笛を吹いた。
ちょうどいいことに、先日手に入れた帽子ともよく似合う、魔女の衣装である。
私は衣装を上機嫌のロクサーヌに渡しつつ、どうしてこれを、宝石職人に聞いてみる。
なにしろ、ハロウィンの祭りはこれからだというのに。
宝石職人は、彼女に来て貰おうと思ったんですが、何故か断られまして、と、難しい顔で言う。
ロクサーヌが衣装を広げてみて、少し、胸元が開きすぎではないですか、ときな臭い顔をした。
私は、胸元の辺りを凝視し、そして力強く頷いた。
そして、別にお前さんが着る訳じゃないんだからいいだろう、と答えると、ロクサーヌは口の中でもごもごと何か言っていたが、ともかく、と衣装を大事そうに鞄の中にしまい込む。
ハーフェズが手を打って、これで衣装の件はおしまいだ、と言い、そして私に向かって、もう一つのトラブルを片付けに行こう、と言った。
私は頷き、そして、港に歩き出した。
曇、北風。
私は片手にぶら下げた靴を、少女に差し出した。
彼女は丁寧に頭を下げると、でも、彼に伝えてください、そんな綺麗なネックレスよりも、貴方がいてくれればそれで十分です、そう言って、笑顔を見せた。
いい話じゃないか。
私は、ウン、分かった、とイイ笑顔で彼女に手を振った。
後ろで、ハーフェズが溜息を吐き、こんなことしてていいのか、と悪態を言った。
私は渋い顔で振り返り、あの石板なら、ぶっ壊すのはいつでも出来るさ、中身を調べてからでも遅くないだろう、と言い返す。
ハーフェズが、ならいいが、お前、グレンの言葉で冷静さを欠いてだろうな、と口をへの字に曲げた。
私は、勿論、と答え、ハーフェズはもう一度、ならいいが、と繰り返した。
グレンが石板を解読している間、我々はロンドンで、しばしの休息を取っていた。
とはいえ、完全に休んでいたわけではなく、ハロウィンで浮き立つ街で出会った
宝石職人(?)に、恋人の様子を見て欲しいと頼まれた。
この男、何と、仕事先の高価なネックレスを持ち出して、彼女に一度つけさせたいと思ったのだが……肝心の恋人が待ち合わせに来ないのだという。
預かりものを持って、ウロウロするわけにも行かず、何とか彼女を連れてきて欲しい……私達はそう頼まれた。
二つ返事で請け負って、様子を見に行ってみると、彼女はどうも靴を盗まれたらしく、今度は彼女の靴を探し回ることと相成った。
悪戯小僧を懐柔したり、
なんだかちょっと、あれ、な感じの吟遊詩人に
リュートを届けたりしつつ、何とか彼女の靴を回収することができた。
もっとも、依頼人の思うとおりに事は運ばなかったようだが。
……とはいえ、悪い結末ではない。
彼女の言葉を伝えると、宝石職人(?)は少し恥ずかしそうに笑い、浅はかでした、と頭を掻いた。
そして、お礼と言っては何ですがハロウィンの衣装に使ってください、と一着の仮装衣装を取り出した。
私とハーフェズは口笛を吹いた。
ちょうどいいことに、先日手に入れた帽子ともよく似合う、魔女の衣装である。
私は衣装を上機嫌のロクサーヌに渡しつつ、どうしてこれを、宝石職人に聞いてみる。
なにしろ、ハロウィンの祭りはこれからだというのに。
宝石職人は、彼女に来て貰おうと思ったんですが、何故か断られまして、と、難しい顔で言う。
ロクサーヌが衣装を広げてみて、少し、胸元が開きすぎではないですか、ときな臭い顔をした。
私は、胸元の辺りを凝視し、そして力強く頷いた。
そして、別にお前さんが着る訳じゃないんだからいいだろう、と答えると、ロクサーヌは口の中でもごもごと何か言っていたが、ともかく、と衣装を大事そうに鞄の中にしまい込む。
ハーフェズが手を打って、これで衣装の件はおしまいだ、と言い、そして私に向かって、もう一つのトラブルを片付けに行こう、と言った。
私は頷き、そして、港に歩き出した。
by Nijyuurou
| 2008-11-17 23:28
| 『死者の祭りに日が暮れて』