『その行方』
2008年 10月 15日
セビリア
曇天、東の風。
一路、セビリアに帰航。
ギルドの依頼斡旋人に結果を報告すると、斡旋人は頭を掻きながら、実は続けて同じ依頼人から仕事があるんだ、と言う。
私は少々意地悪い気持ちになって、またロクサーヌに頼んだらどうだ、とそっぽを向いた。
斡旋人は汗を拭きつつ、まあ、そう意地の悪いことを言うなって、と私の肩を揉んでくる。
私は、ふうん、と気のない返事をして、どんな依頼なんだ、と尋ねた。
なるほど、確かに厄介な依頼である。
私は、遠くを見つめながら、俺今考古学者なんだよな、と溜息を吐いた。
斡旋人は本当に焦った顔をして、そう言うなよ、技術的に問題はないんだろう、と手を合わせてくる。
私は一つ溜息を吐いて、斡旋人から契約書を奪い取り、サインを書き入れた。
例の学者は、笑顔で私達を迎えてくれた。
過分なお言葉も頂いたが、私は手を広げて学者を制した。
大体、褒め言葉なんてのは、相手にろくでもない依頼をする時に言うものだ。
…そして案の定、この依頼には条件が付いた。
今回の依頼は、南米からではなく、東南アジアからの調査を、ということだ。
南米からならば航路は長いが、海賊の数も少なく調査は用意だ。
だが、東南アジアからではそうは行かない。
海賊の数も多く、その上、あの辺りの海賊は停戦の申し出に耳も貸さない荒っぽい連中だ。
そんな危険な航路を辿って調査をしなくてはならない理由を聞いてみると、南米からではマゼラン提督の航路はたどれないでしょう、と言う。
なるほど、もっともな理由である。
だが、私は気になった。
…この学者、マゼラン提督の日誌について、どこまで知っているのだろう。
前回の依頼からして、この学者が例の日誌の中身を知っていることには間違いない。
私は、また、新しい世界周航艦隊がセビリアから出て行ったらしいな…学者にそう言った。
そして、どうもエルカノが水先案内につくそうじゃないか、と付け加える。
学者は、エルカノも必死なのです、と、短く言った。
…私は眉をひそめた。
と言うことは、日誌の内容の大まかなところは知っている、と言うことだ。
では、そこまで知っていて、何故今更調査をする?
私は、椅子に深くもたれ掛かって、片目を開けて相手の様子を伺った。
……学者は少し口ごもり、ガルシア提督の船団が消息を絶ったのです、と言った。
そこでようやく合点がいった。
太平洋付近を航行する船など、数は知れている。
あの辺りの調査を行っていれば、いやでもガルシア船団の消息は耳に入ってくると言うものだ。
それなら、私の目的は、ガルシア船団の捜索、の様なものだ。
初めから言ってくれればいいんだが、と私は息を吐いた。
学者は頭を掻いて、貴方には因縁のある相手を探すことになりますからね、と困った顔をする。
…エルカノか。
俺は別にかまわない、と言うと、学者は、続けていただけるのですか、と驚いた顔を見せた。
彼の目には、私はそれほど執念深いように見えるのだろうか…そちらの方が引っかかって、思わず苦笑する。
私は頷いて、立ち上がった。
あの男には、直接会って、聞きたいことがあるのだ。
私達は一路、東南アジアへと舳先を向けた。
<ルール・過去にとらわれない>
曇天、東の風。
一路、セビリアに帰航。
ギルドの依頼斡旋人に結果を報告すると、斡旋人は頭を掻きながら、実は続けて同じ依頼人から仕事があるんだ、と言う。
私は少々意地悪い気持ちになって、またロクサーヌに頼んだらどうだ、とそっぽを向いた。
斡旋人は汗を拭きつつ、まあ、そう意地の悪いことを言うなって、と私の肩を揉んでくる。
私は、ふうん、と気のない返事をして、どんな依頼なんだ、と尋ねた。
なるほど、確かに厄介な依頼である。
私は、遠くを見つめながら、俺今考古学者なんだよな、と溜息を吐いた。
斡旋人は本当に焦った顔をして、そう言うなよ、技術的に問題はないんだろう、と手を合わせてくる。
私は一つ溜息を吐いて、斡旋人から契約書を奪い取り、サインを書き入れた。
例の学者は、笑顔で私達を迎えてくれた。
過分なお言葉も頂いたが、私は手を広げて学者を制した。
大体、褒め言葉なんてのは、相手にろくでもない依頼をする時に言うものだ。
…そして案の定、この依頼には条件が付いた。
今回の依頼は、南米からではなく、東南アジアからの調査を、ということだ。
南米からならば航路は長いが、海賊の数も少なく調査は用意だ。
だが、東南アジアからではそうは行かない。
海賊の数も多く、その上、あの辺りの海賊は停戦の申し出に耳も貸さない荒っぽい連中だ。
そんな危険な航路を辿って調査をしなくてはならない理由を聞いてみると、南米からではマゼラン提督の航路はたどれないでしょう、と言う。
なるほど、もっともな理由である。
だが、私は気になった。
…この学者、マゼラン提督の日誌について、どこまで知っているのだろう。
前回の依頼からして、この学者が例の日誌の中身を知っていることには間違いない。
私は、また、新しい世界周航艦隊がセビリアから出て行ったらしいな…学者にそう言った。
そして、どうもエルカノが水先案内につくそうじゃないか、と付け加える。
学者は、エルカノも必死なのです、と、短く言った。
…私は眉をひそめた。
と言うことは、日誌の内容の大まかなところは知っている、と言うことだ。
では、そこまで知っていて、何故今更調査をする?
私は、椅子に深くもたれ掛かって、片目を開けて相手の様子を伺った。
……学者は少し口ごもり、ガルシア提督の船団が消息を絶ったのです、と言った。
そこでようやく合点がいった。
太平洋付近を航行する船など、数は知れている。
あの辺りの調査を行っていれば、いやでもガルシア船団の消息は耳に入ってくると言うものだ。
それなら、私の目的は、ガルシア船団の捜索、の様なものだ。
初めから言ってくれればいいんだが、と私は息を吐いた。
学者は頭を掻いて、貴方には因縁のある相手を探すことになりますからね、と困った顔をする。
…エルカノか。
俺は別にかまわない、と言うと、学者は、続けていただけるのですか、と驚いた顔を見せた。
彼の目には、私はそれほど執念深いように見えるのだろうか…そちらの方が引っかかって、思わず苦笑する。
私は頷いて、立ち上がった。
あの男には、直接会って、聞きたいことがあるのだ。
私達は一路、東南アジアへと舳先を向けた。
<ルール・過去にとらわれない>
by Nijyuurou
| 2008-10-15 23:21
| 『世界周航後日譚』